スタッフ同士で「いいね!」も
動画を通じてスタッフ同士がコミュニケーションできる機能もある。各スタッフの動画をほかのスタッフが閲覧して、コメントを加えたり、「いいね!」ボタンを押すことで応援の気持ちを伝えられるようになっている。
「飲食店の現場では1年間でスタッフの半分が入れ替わる」(高橋社長)というほど、外食業界のアルバイトの入れ替わりは激しい。新人アルバイトが職場に溶け込むことができないと感じ、すぐに辞めてしまうことがその理由の一つ。
ほかのスタッフが動画を見て感想を伝えてくれれば仲間意識が芽生え、離職率を抑える効果が期待できる。
ある顧客企業で、クリップラインの導入の有無で新人アルバイトの3カ月以内の離職率を比較した。結果は、未導入の店舗では採用1580人のうち退職565人で離職率36%だったのに対し、導入した店舗では採用668人のうち退職は64人。離職率は10%を切り、大幅に定着率が改善した。
新人アルバイトが定着すれば、求人費用や教育の手間も省ける。「ベテランは新人の2~3倍の生産性がある」(高橋社長)ため、収益にも貢献する。
またある金融機関では、保険販売の教育のために一部の店舗にクリップラインを導入した。未導入の店舗に比べ、医療保険の成約数が約9倍になったという。集合研修よりも当事者意識が高まり、動画を使うことで商談の勘所もつかみやすかったためだ。

高橋社長はコンサルタントとして、あきんどスシローやダイヤモンドダイニングを指導した経験を持つ。クリップラインを考案したきっかけは、外食を含むサービス業の弱点に気付いたためだという。
製造業の場合、製品が規格通りかどうか検査をする工程がある。一方、臨機応変に対応せざるを得ないサービス業では、規定通りに商品やサービスが提供されているかを本部が確認することが難しい。そうした状況を変えたいという問題意識を持っていた頃、タブレットが普及したこともあって2013年に起業。2014年10月からクリップラインの提供を始めた。
外食産業での経験から生まれたクリップラインが普及すれば、第3次産業全体の生産性を高められる。高橋社長はそう確信している。
(日経ビジネス2016年10月31日号より転載)
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