2018年3月期に28期連続で増収を達成し、売上高が2兆円を超える見込みのNTTデータ。過去12年の間に約6000億円を投じてきた海外M&A(合併・買収)が成長の原動力だ。ただし規模は拡大しても利益貢献は不十分。国内のIT人材不足が深刻化する前に、果実を得られるか。

(日経ビジネス2017年12月18日号より転載)

インドのバンガロールで10月上旬に開かれた戦略会議。海外で買収した子会社の幹部が顔をそろえた
インドのバンガロールで10月上旬に開かれた戦略会議。海外で買収した子会社の幹部が顔をそろえた
1.業務アウトソーシングを手掛けるインドの拠点<br />2.社員食堂では、色とりどりのサリーを着た女性が話に花を咲かせる<br />3.欧州の幹部など約150人が集結した
1.業務アウトソーシングを手掛けるインドの拠点
2.社員食堂では、色とりどりのサリーを着た女性が話に花を咲かせる
3.欧州の幹部など約150人が集結した
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 ドイツの大手3社には既に食い込んだ。次はトヨタ自動車だ──。

 10月4日と5日、インドのバンガロールで開いたNTTデータの世界戦略会議。国内外の幹部約150人が集まる中、注目を一身に集めた人物がいる。グローバルマーケティング本部長のロブ・ラスムッセン氏。独ダイムラーから受注した、100億円規模のシステム関連プロジェクトを率いる責任者だ。

 ダイムラーは2015年1月、NTTデータを「グローバルITパートナー」の一社として採用。複数のIT(情報技術)企業に分散発注していた基幹システムの開発や保守運用を、NTTデータに集約し始めた。

 これと並行してNTTデータは同年、独フォルクスワーゲン(VW)から物流や販売システムの運用などを、100億円規模で受注することに成功。以前から手掛けてきた独BMW向けビジネスと合わせ、ドイツの自動車業界に確固たる地盤を築き始めている。

 バンガロール会議の一つの狙いは、独自動車業界を取り込んだ“成功体験”を欧米諸国や南米、そして日本へと展開する方策を探ることにあった。

海外売上高は12年で95倍に

 旧日本電信電話公社を母体とし、年金や自治体のシステム構築で稼ぐドメスティックな企業──。そんなNTTデータのイメージはもはや過去のもの。今や国内IT大手屈指のグローバル企業へと変貌した。

海外がけん引し28期連続増収へ
●NTTデータの業績推移と主な企業買収
海外がけん引し28期連続増収へ<br />●NTTデータの業績推移と主な企業買収
注:決算期は3月。17年度は海外子会社の決算期変更を含む

 過去12年間で50社以上の海外企業を買収し、投じた金額はおよそ6000億円。06年3月期に95億円だった海外売上高は、18年3月期に9080億円に達する見通しだ。今期の売上高が2兆円を突破する見通しだから、その半分近くを海外で稼ぐことになる。

 今年3月時点では、海外の従業員数は7万7000人と全体の7割を占める。約3500億円を投じて傘下に収めた米デルのITサービス部門の統合が順調に進めば、海外売上高が1兆円を超える道筋が見えてくる。

 海外シフトを加速する理由ははっきりしている。NTTデータの“祖業”が頭打ちになりつつあるのだ。

 関わりの深い年金システムでは「調達方式の変更で、オールインワンで受注することができなくなった」と公共・社会基盤分野担当の青木弘之取締役は話す。さらに中央省庁はシステムのクラウド移行を進めており、運用経費を3割減らすことが目標になっている。野村証券の田中誓アナリストは「NTTデータの関連売り上げも数百億円規模で減りかねない」と指摘する。公共と並ぶ柱である金融機関向けも、低金利で銀行の収益環境が厳しい中では、大きな成長は見込めない。