今年で設立から21年が経過し、日本のネット産業の興隆と軌を一にしてきたヤフー。パソコン向けのネット市場を席巻することで成長してきた故・井上社長時代を同社の第1期とすれば、後に来たスマホの台頭に追随するため手を打った宮坂社長の「爆速経営」は第2期に当たる。いま訪れているのは、ビッグデータで革新的なサービスを狙う第3期だ。ライバルとの競争に加え、打倒「大企業病」という社内の闘いが、新たなステージでの成否を左右する。

(高槻 芳)

親会社との関係も変化へ
<span class="fontBold">ソフトバンクグループとの連携効果をどう引き出すかもカギに</span>(写真=北山 宏一)
ソフトバンクグループとの連携効果をどう引き出すかもカギに(写真=北山 宏一)

 ヤフーの経営を考える上で避けて通れないのが、親会社であるソフトバンクグループとの関係だ。

 これまで投資家や業界関係者の間には「豊富な資金を持つヤフーがソフトバンクの資金繰りのため、都合良く扱われているのではないか」との疑念が根強くあった。実際、2009年にソフトバンクがデータセンター子会社を約450億円でヤフーに売却。14年に勃発したヤフーによるイー・アクセス買収中止騒動も、こうした見方を強めることになった。

 ヤフーは当時、ソフトバンク傘下で国内携帯電話4位だったイー・アクセスをソフトバンクから買収すると発表。ヤフーの検索サービスなどを手軽に利用できるスマホの開発や、イー・アクセスの販売店を通じた顧客接点の強化を打ち出したが、この買収でソフトバンクに約4500億円を支払うことが判明。ヤフーの株主が「親会社の資金繰りを助けるためか」と反発する中、計画は発表から2カ月で白紙に戻った。

 こうした経緯もあったが、両社の関係は今後変化していきそうだ。ソフトバンクグループがサウジアラビア政府などと総額約10兆円を拠出した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を作ったためだ。これによって、ヤフーは資金の出し手としてではなく、このファンドの出資企業が持つサービスや技術を日本に導入する際、協力する形が増えるとみられる。ヤフー社内に設けられた専門組織「ビジョンジャパン推進室」が中心となって、国内での事業展開のあり方を検討していくという。

INTERVIEW
宮坂学社長に聞く
まだ一息つく場面じゃない
(写真=陶山 勉)
(写真=陶山 勉)

昨年、設立20年を迎えました。

 「振り返ってみると、前社長の井上(雅博)さんが事業全体の基礎を固め、それをスマホの世界に引き継いだのが私の代でした。この数年は『このままでは会社が潰れるぞ』と全社で危機意識を共有し、スマホシフトを進めてきました。ある程度うまくいったと言えます。でも、そんな時だからこそ、まだ一息つく場面じゃない、気を引き締めなければと思っています」

 「今まで当社は新事業を追加しながら成長してきました。今後も新しい挑戦を続けます。その一つが日本のEC市場でトップに立つこと。競争は厳しいですが、諦める必要はないと思っています。国内の物販のうち、ネットを介して売買される比率は日本はまだ5%程度。将来、20%ぐらいまではいくでしょう。まだ勝負はついていません」

ライバルに勝つための方策は。

 「競合サービスに10個の機能があったら、自社のサービスには11個の機能を用意する。私はそれを『差別化』と呼んでいます。大事なことですが、すぐにライバルに真似されてしまう。差別化だけでなく、ライバルが真似したくてもできないことをやる。それを私は『差異化』と呼んでいて、こちらを最も重視しています」

ヤフーはどこで差異化するのですか。

 「ネット検索からEC、決済までワンストップで展開しているところはユニークな点でしょう。それぞれの利用履歴のビッグデータをもっと連携して分析すれば、ユーザーの“行動ゲノム”のようなものを把握できるようになり、大きな強みになるはずです」

取り組みが実現するのはいつですか。

 「よく聞かれるのですが、明確に答えるのは難しいですね。成果が出そうなサービスから少しずつ導入し、連携させるデータの対象も段階的に広げるのが現実的です。すでに一部のサービスに取り入れ、効果が出ています。商品の購入履歴や決済履歴のデータを分析し最適な広告配信につなげるといった仕組みを実現するには様々な課題がある。この山を登りきらない限り、永遠に差別化との戦いから抜けられません」

 「今年は井上さんが交通事故で亡くなり、米ヤフーが事実上消滅したという意味で大きな節目でした。一つの時代が終わり、我々はどう戦っていくのか。グローバル市場で当社はあまりに小さいという事実に行き着きます。世界のIT大手と同じ戦い方をしたところで勝てるはずがない。我々にしかできない戦い方で勝負していきます」

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