成長しているが安定志向で独自性に乏しい──。こんな揶揄もあったヤフーが生まれ変わろうとしている。米国を後追いする「タイムマシン経営」から、イノベーションを生む企業を目指す。ビッグデータの活用でライバルに先んじようともくろむが、立ちはだかるのは忍び寄る大企業病だ。

(日経ビジネス2017年12月4日号より転載)

取引先もライバル会社も自由に出入り
●ヤフー社員の社外交流を促すコワーキングスペース「LODGE」
(写真=陶山 勉)

 「すごい活気だな」

 かつて「赤プリ」と呼ばれた旧・赤坂プリンスホテル(東京・千代田)の跡地に立つ高層複合施設。11月上旬、17階のコワーキングスペース「LODGE」を訪れた大手IT企業の社員は思わず唸った。コワーキングスペースとは、起業を志す人や設立間もないベンチャー企業の社員など複数の利用者が共有する仕事場のこと。数々のイノベーションを生んだ米シリコンバレーを真似て、ここ数年、日本でも不動産会社などが各地に設置している。

 だが、LODGEを運営しているのは、この複合施設に本社を構えるヤフーだ。都心の一等地の1フロア、約400坪をぶち抜いた大部屋に所狭しとデスクが並ぶ空間では、ヤフーの社員証を首からぶら下げた者と外部の利用者が隣り合わせになって仕事をしている。そんなごった煮的な雰囲気を気に入ったこの会社員は帰り際、入り口近くにある自己紹介カードにこう書き残した。

 「グーグルからこんにちは!」

 受付窓口で身分証明書を提示すれば無料で社外の者でも使える。グーグルのようなライバル企業の社員も利用できる。会議室やカフェも併設している。ヤフーがこんな場を設け、起業家はもちろん、競合企業の社員であろうとお膝元に呼び込むのは、外部とのネットワーク作りや新たな事業のアイデア探しにつなげたいという狙いがある。

「このままでは踊り場」

 2016年10月の本社移転を機に設けたLODGEは、いかにもIT(情報技術)企業らしい空間である。だが、その裏にあるのはヤフーの強い危機感だ。

 「過去20年で何か新しいものを生み出せたか。まだまだ足りない。このままでは成長の頂きを目指せず、踊り場で止まってしまう」。厳しい表情で語るのは宮坂学社長だ。