経営が立ち行かなくなった地方の温泉旅館を取得、再生するビジネスモデルで成長を続ける。現在33施設を運営。わずか10年で、事業エリアは東北から九州まで広がった。米投資ファンドの傘下入りや、REITの組成で経営体制を強化し、拡大戦略に拍車をかける。

ホテルニュー塩原の夕食バイキング。グループの旅館・ホテルの夕食と朝食は全てバイキング形式で、顧客満足度と採算の向上を両立している(写真=都築 雅人)

 10月中旬の昼過ぎ。首都圏近郊の塩原温泉(栃木県那須塩原市)にある大江戸温泉物語グループの「ホテルニュー塩原」は宿泊客でごった返していた。

 この日は平日にもかかわらず、全271室が満室。ロビーにはチェックインの手続きを待って約30人が列を作っていた。奥では早々と手続きを終え、浴衣姿で談笑する宿泊客も多く見られた。午後5時に地下の夕食会場をのぞくと、さらに活気ある光景が見えてきた。

カニも食べ放題で提供

 夕食はバイキング形式。午後5時からの3交代制だ。この日は集客の目玉のカニが登場。料理テーブルの目立つ位置に食べ放題のカニが山積みされ、宿泊客がわれ先に手に取っていった。

 午後8時前。食事を終えた宿泊客が、ロビーや売店奥のイベントホールに再び集まり始めた。壇上にさっそうと現れたのは、歌手の宇都ノ宮晃氏。ホテルニュー塩原専属の歌手だ。

宇都ノ宮晃氏の歌謡ショー。彼らホテル専属の歌手はグループの各地の旅館・ホテルも回り、宿泊客を盛り上げている(写真=都築 雅人)

 歌謡ショーで宇都ノ宮氏は北島三郎さん、氷川きよしさんなど演歌歌手のヒット曲を次々と熱唱。「声援や拍手が少ないと、舞台の幕が勝手に下りてきます。盛大な応援を頂き、最後まで歌わせてください」などの軽妙なトークやパフォーマンスを挟んで笑いを誘い、集まった約200人を盛り上げた。宇都ノ宮氏はNHK「紅白歌合戦」の出場が目標だという。

 同施設は1泊2食付きで1人当たり8000円弱から利用できる。時期によって変動はあるが、温泉旅館の中では手ごろな価格設定だ。「宿泊費とお土産代、往復の交通費を合わせて、1万円でお釣りがくる手軽さ」を売りにする。歌謡ショーは無料で見られるし、最寄り駅とホテルの間は無料のシャトルバスが走る。有料施設もボウリング場、カラオケボックス、マッサージルームなど充実した設備を持つ。