システム開発力に強み

 グラモは法人向けの販路を着実につかんでいった。端末が高機能だったことが成果の一因だ。IoTリモコンはエアコンや照明、テレビなどの家電を赤外線で制御する。それぞれの家電はリモコンに対して別々の方向にあり、距離もバラバラだ。全方向に強い赤外線を照射できる必要があった。

 グラモのIoTリモコンは強力な赤外線LEDを内蔵し、端末は全方位に均等に赤外線を照射できるよう丸い形をしている。どのような部屋でも、遮蔽物さえなければリモコンを置くだけで家電を制御できる。不動産事業者にとっては、物件を選ばず設置できる使いやすさが魅力だ。

 システムの開発力を備えていたことも企業向けに売り込む上で有利だった。例えば住宅などにIoTリモコンを配備する際は、不動産会社から床暖房や車庫のシャッターなどの設備もアプリから操作できるようにカスタマイズしてほしいとの要望があった。そこで、電子機器に組み込みWi-Fiを介してIoTリモコンからを機器を制御する「ユニバーサルユニット」を開発。アプリもカスタマイズするなど要望に応じた。

グラモの創業のためにマイホーム貯金をつぎ込んだという後藤功社長(写真=陶山 勉)
グラモの創業のためにマイホーム貯金をつぎ込んだという後藤功社長(写真=陶山 勉)

レオパレス21との提携で急拡大

 16年7月、グラモの売り上げを大きく伸ばすチャンスが訪れた。賃貸不動産大手のレオパレス21の新築全戸にIoTリモコンを導入する提携が決まったのだ。年間約1万台を出荷する大型契約だ。この発表を機に引き合いが急増した。取引につながる引き合いだけでも「50件以上あった」(後藤社長)という。

 さらにレオパレス21とはスマホで玄関の鍵を開閉できる「スマートロック」も共同開発した。IoTリモコンと連携していて、外出先から鍵の開け閉めを確認・制御できる。閉め忘れを防いだり、遠隔から訪問者を部屋に招いたりできる。鍵の交換や不動産の内覧のための解錠・施錠も電子的に制御できるため、賃貸アパートなどの管理事業者は業務を効率化できる。

 16年度の売上高は1億7700万円だ。大口契約もあって17年度は上期だけで1億1300万円。法人向けは下期の売上高比率が高く、17年度通期の売上高は3億円を超える可能性がある。

 グラモはIoTリモコンをAIスピーカーとして出荷する予定だが、後藤社長は「他社のAIスピーカーとは競合しない」と話す。例えば「アマゾン エコー」で家電を操作するには、エコーに対応した家電をそろえる必要がある。IoTリモコンをエコーと連携させれば、赤外線で制御できる家電は全てエコーを通じて操作できるようになる。エコーの国内発売が発表された17年11月8日には、エコーとIoTリモコンを連携させるアプリ(スキル)を発表した。

 後藤社長は「家電を操作するだけなら単体のAIスピーカーとして売り込める。他社のAIスピーカーの独自機能が必要なら、併せて使ってもらえる」と話す。米アマゾン・ドット・コムや米グーグルといったIT大手がAIスピーカーを拡販することで、IoTリモコンの機能を持ったグラモのAIスピーカーの需要も高まりそうだ。

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