IT(情報技術)を活用して、旧態依然とした不動産仲介の慣習を次々に打ち破る。中古マンションの相場情報を無料で提供し、仲介料は定額。独自の手法で消費者の心をつかむ。

(記事中の情報は、「日経ビジネス」2016年11月28日号 に掲載した時点のものです)

物件の相場を“見える化”
マンションマーケットのウェブサイトでは、全国の中古マンションの相場情報が地図上に表示される。情報はすべて無料だ

 「不動産価格の相場を消費者が知らないなんて、おかしい」

 不動産ベンチャーであるマンションマーケット(東京都中央区)は、創業者である吉田紘祐社長のこんな思いから出発した。同社の最大の特徴は、社名の通りマンションの相場情報(推定の売却価格)を提供していることにある。

 1平方メートル=87万円で資産評価は四つ星、現在の相場は6550万円──。同社のウェブサイトには、全国の中古マンションの相場情報が、地図上にずらりと表示されている(上の図)。これらの情報はすべて、無料だ。

 吉田社長がこのサイトを立ち上げるまで、日本国内で消費者が中古物件の相場を知ることができるデータベースは存在せず、売買価格情報や相場情報は不動産仲介業者が独占していた。物件の購入希望者は相場が分からず、不動産業者の言い分を聞くしかなかった。圧倒的な情報格差が、仲介業者のビジネスを成り立たせていたのだ。

業界の慣習を打ち破ったマンションマーケットの吉田紘祐社長

 もう一つ、吉田社長が「おかしい」と思う業界の慣習があった。それが不動産仲介手数料の算定方法である。

 通常、中古不動産を売買する場合、売り手と買い手はそれぞれ仲介業者と媒介契約を結ぶ。購入が決まれば、それぞれの仲介業者は契約相手から、上限で「売買価格の3%+6万円」の仲介手数料を得る。この上限は、宅地建物取引業法で定められている。あくまで上限だが、仲介業者はこの上限手数料を請求するのが通例になっている。

 リクルートグループの不動産ポータルサイト「SUUMO」の営業だった時代、吉田社長は東京のほか、鹿児島などの地方も担当した。そこで、この算定方法が抱える問題点に気付いた。

 1億円の住宅なら手数料は306万円。2000万円の住宅なら66万円となる。ただし、「どちらの住宅を売るにしても、仲介業者の仕事はほとんど変わらない」(吉田社長)。すると、どうしても仲介業者は高い物件を薦める傾向になる。手間が同じなら、手数料が多いほうが得をするからだ。「本来は定額にすべきだと感じていた」と吉田社長は言う。