新規事業開発で少しずつ果実を生み出しつつあるBIC。だが、この仕掛けだけでコニカミノルタの事業構造を変えるには限界がある。だからこそ、BICにはもう一つのミッションが与えられている。波木井卓BICジャパン所長は話す。「コニカミノルタ全体の企業文化をイノベーティブにしていくことだ」

 クンクンボディ開発の主体はあくまでも外部人材を中心としたBIC。従来コニカミノルタにいる社員からすれば、「“外様”が何か新しいことをやっている」程度にしか見えない。

 そこでBICではグループ社員を対象に3カ月に1回、社内で受講者を募集する勉強会を開催。カリキュラムを自分たちで考え、新規事業やイノベーションの起こし方などの講義を始めた。こうした交流活動を通じ、社内でもBICに対する認知度が向上。自ら手を挙げてBICへの異動を希望する社員も増えてきた。当初10人全員が外部人材だったBIC日本の陣容も、今では20人の3分の1がコニカミノルタの別部署からの異動組だ。

独自の道を模索

 キヤノン、富士フイルム、リコー──。同じような事業構造を抱えているが故に、コニカミノルタはこれまでも「3強」と似た形で、事業の裾野を広げてきたように見える。メディカル分野にしても、キヤノンは6655億円で東芝メディカルシステムズを傘下に収め、富士フイルムは武田薬品工業から約1500億円で試薬大手の和光純薬工業を手に入れた。次は医療、という戦略はどこも同じだ。

 だが、山名社長は強調する。「我々がやりたいのは薬の作り方を根本的に変えること」。大型の画像診断装置事業で世界市場に挑むキヤノンや、自ら薬を作り出すことを狙う富士フイルムとは違う戦略だという。「脱・後追い」を鮮明にするコニカミノルタ。その成否で未来は決まる。

INTERVIEW
山名昌衛社長に聞く
世界はソフトウエアで付加価値を出す時代
山名昌衛社長は「事業構造を変革し会社を進化させる」と語る(写真=北山 宏一)
山名昌衛社長は「事業構造を変革し会社を進化させる」と語る(写真=北山 宏一)

 だいぶ前から複合機事業の先行きには危機感を持っていました。トナーのケミカル技術や、紙送り機構など複雑な技術のすり合わせなので参入障壁はある程度守れましたが、ハードウエアの性能競争はいずれ行き着く。新たな付加価値の競争に早く入らなければと思っていました。

 IT(情報技術)部門がない顧客に対し、複合機という単体の製品から、ITで業務課題を解決するソリューションを含めた事業に進化するため、ITサービス企業を買収してきました。今後も強化しますが、「複合機+IT」というモデルではあと5年はもたないでしょう。

 そこで今取り組んでいるのが、「ワークプレイス・ハブ」です。カメラやチャットともつながるプラットフォームで、様々なデータのセンシングができます。将来はAI(人工知能)を載せることも考えており、提供する価値が増えます。

 医療分野では我々も東芝メディカルシステムズの買収に手を挙げました。彼らのコアはCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)に代表される大型の画像診断です。当社は装置そのものではなく、早期診断という得意分野との組み合わせで価値を出そうと考えていました。結果的にキヤノンさんに負けましたが、同じ医療分野といえども、彼らとは買収の目的が最初から違っていたのではないでしょうか。

 これからはグローバルで新しい事業モデルに進化させないと、競争を勝ち抜けません。そのためには、すでにいる人材を変革しながら新しい人材を補強する必要がある。これは米国や欧州でM&A(合併・買収)という形で行ってきました。

 日本でも、今いる人材に必要な新しいスキルを明示して、そこに向けて変わってもらうための計画を進めています。ただ、日本ではあまりM&Aをやっていないので、足りない部分については大胆にヘッドハンティングを含めた人材補強策を採る必要があります。

 日本の製造業は、製品をずっと磨いて、品質を磨いて、全て完成してから市場に出すという方法を取ってきました。ですが、もう世界はソフトウエアで付加価値を出す時代です。日本の製造業にとっては大きな挑戦で、求められる発想も人材も変わってくる。ビジネスイノベーションセンター(BIC)を核にしながら、新規事業の創出と人材育成を図っていきたいと思います。(談)