だが、こうした「複合機+IT」の戦略はキヤノンや富士ゼロックスといった競合がどこも志向している。差異化するには、何が必要か。

 新型オフィス機器「ワークプレイス・ハブ」がその一つの答えという。IT環境が整備されていない中小企業向けのサーバーを組み込んだ製品で、読み取り機能を使って帳票を自動入力するソフトなどを開発。ITに不慣れでも全社員のIDやセキュリティーを簡単に管理したり、ファイル共有やビデオ会議、チャットなどができる機能を搭載し、「中小企業のITの困りごとを丸ごと解決する」と、同製品を扱う高山典久WPH事業部長は意気込む。

 もっとも、株式市場の見方は厳しい。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小宮知希シニアアナリストは「オフィスの機器に付加価値を認めてお金を払う顧客は少ない。いかにコスト削減に寄与できるかがカギだが、この分野は競合も多い」と指摘する。

 実際、コニカミノルタの時価総額は約5000億円と、「3強」に及ばずにいる。5兆円を上回るキヤノンはいざ知らず。富士ゼロックスを子会社に持つ富士フイルムホールディングスも2兆円を超える。リコーも8000億円超だ。03年の統合を機に委員会等設置会社への移行を決めるなど、企業統治の面では投資家の評価は高いが、それでもなかなか「3強」に追いつけない。

 現状に甘んじることなく、いかに新規事業で勝負をかけるか。山名社長は外部人材に活路を見いだしている。その拠点として14年に立ち上げたのが、「ビジネスイノベーションセンター(BIC)」。あえて複合機などコニカミノルタの既存事業とかかわりのない外部人材を採用。しかも、日本のみならず、シンガポール、米シリコンバレーなど世界5カ所に設置し、それぞれの拠点のトップもすべて外部人材を充てた。

「自分で決められる」

外部人材を積極的に活用している
●コニカミノルタの外部人材(敬称略)
役職 氏名 経歴・出身業界など
ヘルスケア事業本部長藤井清孝SAPジャパン社長、オリンパス社外取締役など
産業光学システム事業本部長兼BIC担当市村雄二NECで北米でのM&Aなどを担当
BICジャパン所長波木井卓ベンチャー起業家
BIC-EUディレクターデニス・カリー北大西洋条約機構CTO(最高技術責任者)など
BIC-USバイスプレジデントエクタ・サハシ米ゼネラル・エレクトリック、米イーベイなど

 こうした考え方を山名社長に提案したのは、12年に入社したNEC出身の市村雄二氏。市村氏は山名氏が社長に就任する前に今後のメーカーとしての生き残り策で意気投合、山名氏の誘いもあってコニカミノルタ入りした。個別化医療の実現を目指し、米2社の買収を主導した藤井氏もSAPジャパン社長やオリンパスの社外取締役を務めた経験がある。

 BICの成果は出始めてはいる。複合機事業の新たな形を探る「ワークプレイス・ハブ」はBICの欧州拠点が生み出した。

 日本でも新たな挑戦が始まっている。

 「あなたの臭い、見てみませんか」──。

 17年春、大阪の中心地でコニカミノルタの社員が青いポロシャツを着て、通行人に呼びかけていた。手にしていたのは、体臭計測器の試作品だ。

大阪の街頭で行ったアンケート調査には、BICの所属ではない社員も参加した
大阪の街頭で行ったアンケート調査には、BICの所属ではない社員も参加した
クンクンボディは発表直後から反響は大
クンクンボディは発表直後から反響は大

 土日で計600人にアンケートを実施したところ、9割が測ってみたいと回答。この試作品は「Kunkun body(クンクンボディ)」として発表し、秋に発売された。100台の目標を大幅に上回る1800台以上を受注済みだ。

 クンクンボディを開発したのはBICの日本拠点。発案者は大手半導体メーカーから転職してきた秋山博氏だ。

 クンクンボディにコニカミノルタの技術は使われていない。基幹となる臭いの数値化は、秋山氏がインターネット検索で見つけた大阪工業大学の大松繁客員教授が持つ技術だ。「大概のことは自分で決められる」(秋山氏)スピード感も、これまでのコニカミノルタにはないBICの特徴だ。

 クンクンボディは大松教授との出会いから約2年で製品化にこぎ着けた。企業との共同開発の経験が豊富な大松教授は「普通は製品化に5年くらいかかるから驚いた」と舌を巻く。

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