蛍光粒子は直径数十ナノ(ナノは10億分の1)メートルと小さく、安定した品質での量産が難しい。そこで生きたのが、写真フィルムの感光材料である銀の粒子を設計・量産してきた旧コニカの技術だ。

 病気を調べる「目印」にたんぱく質を据えるのがコニカミノルタの方法なら、買収したアンブリーは遺伝子そのものを「目印」にする。こうした病気の進行具合や、薬の効き目を測定するのに役立つ目印はバイオマーカーと呼ばれ、今後の個別化医療時代にその役割は高まるとみられている。

バイオマーカーとは
病気にかかっていたり、薬を投与したりしたときに反応する特定のたんぱく質や遺伝子などのこと。血液や尿などに含まれ、その値をチェックすることで病気の進行度合いや薬の効き目が分かる。

 アンブリーのアーロン・エリオットCEO(最高経営責任者)は「HSTTは、当社の遺伝子解析技術と補完関係にある」と強調。コニカミノルタ側でアンブリー買収を主導した藤井清孝常務執行役も「アンブリーとコニカミノルタの技術を組み合わせれば、遺伝子とたんぱく質の両方を深く知る世界初の企業になる」と期待を込める。

 インヴィクロも個別化医療と無縁ではない。同社の強みは画像解析技術。バイオマーカーが体内でどう振る舞っているのかを「見える化」する技術に優れている。

病院と製薬会社にパイプ

複合機偏重の事業構造を変えようとしている
●コニカミノルタの売り上げ構成
<span>複合機偏重の事業構造を変えようとしている</span><br />●コニカミノルタの売り上げ構成
注:‌2020年3月期の数字にアンブリーとインヴィクロの買収効果は含まれていない

 すでにこの技術は製薬会社で生かされている。化学合成で効き目のある薬を作り出すことが難しくなっている製薬業界。各社は効率よく薬効の高い薬の開発を目指している。こうした開発プロセスで重要な役回りを演じるのが、遺伝子やたんぱく質などのバイオマーカーだ。インヴィクロは製薬会社が求める新しい開発プロセスのニーズをとらえ、140社の製薬会社の創薬業務にかかわる。

 病院と太いパイプを持つアンブリーと、製薬会社が顧客のインヴィクロ。コニカミノルタは両社が持つ特異な技術のみならず、今後のヘルスケア事業の強化に欠かせない顧客基盤も一気に手に入れたことになる。

 山名昌衛社長はこう豪語してみせる。「22年3月期には買収した2社を中心に新たに1000億円の売上高を生み出す」。すでに手掛けている超音波検査装置などとは別にヘルスケア分野で収益の柱を作り出す狙いだ。

 山名社長を新規事業の育成に駆り立てるのは「今のビジネスモデルでは5年も持たない」という強烈な危機感だ。

 コニカミノルタの収益源の柱は今も昔も事務機を中核とする情報機器事業だ。山名氏は14年4月に社長に就任して以降、単なるハードウエアを売るメーカーから、IT(情報技術)サービスを付加したソリューション(問題解決策)を提供するサービス会社への転換を図ってきた。この数年でも欧州などで地域に根差した営業網を持つITサービス会社を次々に買収。欧州のオフィス向け複合機ではカラー機でシェアトップレベルを誇るまでになった。

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