意識面で芽生える「日産離れ」

 次代のマネジメント層の育成も必要になる。これまでは日産が人材供給源となってきたが、これからはそうもいかない。「日産に頼りきっていたマインドを変えていく。30〜40代の中堅層の人事制度を見直し、守りに入らずに挑戦を奨励する文化をつくりたい」と森谷社長は強調する。

 10月26日、意識面での「日産離れ」を象徴する出来事があった。森谷社長が無資格検査問題で国内向けの生産を停止した日産に対して、休業補償などの関連費用の負担を求める可能性を示唆したのだ。日産の生産再開後、森谷社長は「ダメージは小さかった」と話すが、系列のくびきを断ったことを社内外に印象付けた。

 日産という巨大な「傘」を離れ、独立系部品メーカーとして再成長を目指すカルソニックカンセイ。自らの強みをどう引き出すか。その行方は「脱・系列」に動く他の部品メーカーの戦略にも影響を与えそうだ。

(寺岡 篤志)
KKRジャパンの平野博文社長に聞く M&Aで非連続の成長を
(写真=稲垣 純也)

 2013年の夏、私から日産自動車にカルソニックカンセイの買収を提案した。日産も売却の検討はしていたようだが、ファンドが同社を順調に成長させてくれるか、不安もあったと思う。結局、契約締結まで3年かかった。

 カルソニックカンセイの強みは、これからの電動化に対応する電子部品、需要を今後も維持できる空調システム、残存者利益を狙える排気系など、それぞれ違った局面で利益を生む製品群があることだ。それらは日産に技術力を鍛えられてきた。加えて世界に約80カ所の製造拠点があり、経営会議も英語が公用語になっている。日産の影響でグローバル化が浸透しているのも強みといえる。

 今後は日産へのビジネスは維持しつつ、それを土台に新たな成長投資をしていかなくてはならない。日産以外のビジネス拡大のため、技術、顧客基盤、製造拠点の3つの観点から、欠けているピースを埋めるM&A(合併・買収)を積極的に進めていく。

 M&Aの資金はKKRが後押しする。これは日産への部品供給体制の維持と並んで、株式売買契約の際の同社との約束事だ。

 部品メーカーのM&Aはこれまで欧米で進んできた。カルソニックカンセイもこうした動きを進め、非連続の成長を遂げていく。100年に1度といわれる自動車業界の変革の中で、戦略的な事業の切り離しも進むだろう。有望案件はどんどん出てくるはずだ。(談)

カルソニックカンセイの森谷弘史社長に聞く 日産とは引き続きウィンウィンに
(写真=的野 弘路)

日産自動車がカルソニックカンセイの株式を手放しました。その背景をどう捉えていましたか。

 「お互いの実力を高めるためには必要なことだったと思っています。自動車業界を取り巻く環境が大きく変わる中、日産は新たな成長投資が必要だったはず。我々も日産と一緒に進んでいくだけでは尻すぼみは避けられなかった。自身でリスクを判断し、投資判断を早くしていく必要がありました。我々が成長することで、日産への部品の投資コストも抑えられます。引き続きウィンウィンの関係を保っていけると思います」

米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)による買収が発表されて約1年。社内で変化を感じていますか。

 「当初、社内では不安の声の方が大きかったですね。しかし、資本関係がなくなったからといって、日産からの発注が減るわけではありません。日産以外に顧客先を広げるための拡販チームも日米欧で立ち上げています。社員のモチベーションは上がっていると思います」

日産以外の取引先を開拓し、事業を拡大する上での課題は何ですか。

 「9月に発表した2021年度までの中期経営計画では、日産向け以外の付加価値売上高比率を現在の20%から30%に引き上げる目標を掲げました。カルソニックカンセイならではの、ナンバー1、オンリー1の製品をいかに作れるかという勝負になります」

 「成長のカギを握る要素は2つあります。一つは、自動運転や電動化に対応した新たなコックピット周辺のソリューションをつくること。そして、熱・電力を組み合わせた自動車の総合エネルギーシステムを構築することです。そのために、人材への投資は惜しみません。国内の技術者は21年度までに3割増やすつもりです。欧米では、KKRの仲介で、自動車メーカー大手とのパイプを持つ人材をヘッドハンティングしています」

日産傘下の時代には社内で自ら課題を探る文化がなかったと聞きます。これからどうやって意識改革を進めていきますか。

 「中堅の技術者への権限委譲を進めていきます。また、国内外の技術者で合同のプロジェクトチームをつくるなど、組織を活性化させる仕掛けを考えます。失敗を恐れず、意欲的なアイデアを出せるようにしていくことが重要でしょう。大切なのはスピード。失敗をしても修正をすればいいと繰り返し社内で訴えているところです