「独立系」としての色合いを強め、再成長を目指すようになったカルソニックカンセイ。だが、日産系列を離れるまでには曲折があった。むしろ、当初は「切り離される」方向にあった。

 日産が経営危機に陥り、仏ルノーの支援を仰いだ1999年。日産に乗り込んだカルロス・ゴーン現会長が「保有する1394社の株式のうち、4社を除いて保有が不可欠とは考えていない」と、系列解体を宣言したときのことだ。ゴーン氏は4社がどこかは公言していないが、「その中にカルソニックカンセイの前身企業は入っていなかった」(日産幹部)。

 もともとエアコンなど空調システムを主力としてきたカルソニックと、センサー類やメーターなど表示計システムに強みを持つカンセイが2000年に合併してできたのがカルソニックカンセイだ。ゴーン氏が主導する系列再編の流れの中で、すでに欧州で進んでいた部品の「モジュール(複合部品)化」に対応して生き残る道を選んだ。

 その成果として生み出したのが、運転席周りの空調システムやメーター類を一体化した「コックピットモジュール」。この製品が日産にとって欠かせないものになる。カルソニックカンセイはモジュールに必要な部品の調達先を開拓。日産が海外に工場を設ければ、その工場内に生産ラインを設けるまでになった。日産のグローバル展開を支える「黒子役」を果たしたのだ。

 そうした蜜月ぶりを示すのが、日産がいったん下げたカルソニックカンセイの株式保有率が再び上昇したこと(下のグラフ)。第三者割当増資を引き受ける形で、05年には4割まで高めた。

ゴーン氏就任後、日産との関係が変化
●日産自動車によるカルソニックカンセイの株式保有比率
注: 1999年3月期、2000年3月期の数値は合併前のカルソニックの保有比率(写真=左上:AFP=時事)

 だが、日産のグローバルな生産網が構築されると、カルソニックカンセイの役割は低下していく。もともと系列にこだわらないオープンな調達姿勢のゴーン氏だ。コックピットモジュールにしろ、カルソニックカンセイだけに調達先が縛られてはコスト競争力が低下しかねない。EVや自動運転など、新領域への投資を増やしたい中で、カルソニックカンセイの売却案が日産社内で再浮上する。結局、三菱自動車との資本提携が完了した昨年10月、ゴーン氏はKKR設立者のヘンリー・クラビス氏、ジョージ・ロバーツ氏とトップ会談を開き、カルソニックカンセイ株の全株売却で基本合意した。

独立はもはや悲願

 このディールを持ちかけたのはKKRジャパンの平野社長である。13年に、日産サイドにカルソニックカンセイの買収意向を示していた。「日産傘下ではポテンシャルを発揮しきれていないと感じていた」と平野社長は振り返る。カルソニックカンセイの「ポテンシャル」とは部品のモジュール化やEV部品など独自性のある技術や、世界で約80に及ぶ広大な製造拠点だ。

 カルソニックカンセイにとっても、日産からの独立はもはや悲願となっていた。元幹部は「日産が調達する部品の中で、カルソニックカンセイのシェアが上限近くに達していたものも多い。つまり、我々の成長余地は限られているということだ。飛躍的な成長をするためには、日産以外の取引先を開拓する必要があった」と指摘する。

 もっとも、「独立系」のカルソニックカンセイは、もう日産からの受注だけに頼れない。どれだけ世界市場で存在感を高められるか。

 自動車部品業界では再編が進む。独ZFは15年、米TRWオートモーティブを買収。韓国サムスン電子が今春、米ハーマンインターナショナルを傘下に収めるなど異業種を交えた動きも広がる。カルソニックカンセイが「ポテンシャル」を早期に発揮できる体制を再構築しなければ、「業界の再編の波にのまれる可能性もある」(国内アナリスト)。

 まず、必要なのは規模拡大だろう。国内の独立系部品メーカーとしては珍しい売上高1兆円超え企業だが、うち実際にカルソニックカンセイに利益をもたらす付加価値売上高は6000億円にとどまる。そのため、営業利益率は4%程度と業界平均(6.1%)を下回る。世界最大の部品メーカーである独ボッシュの売上高は約9兆円、国内トップのデンソーは約4兆円。ライバルの背中はまだまだ遠い。