「手の内」は誰にでも見せる

 「独立系」の部品メーカーになったことで、自動車メーカーがカルソニックカンセイを見る目も変わってきた。同社のグローバルテクノロジー本部長を務める村上秀人副社長は「日産の下を離れて『ようやく手の内を見せてもらえるんですね』と期待の声をもらっている」と話す。

 自動車各社がカルソニックカンセイに真っ先に期待するのはEV関連分野だ。2010年に初の量販型EV「リーフ」を発売した日産の下で、EV関連部品の実績を積んできたからだ。リーフにはモーターとバッテリーの間の電流を制御するインバーターをほぼ独占的に供給しているほか、バッテリーコントローラーや熱交換器も手掛ける。

●カルソニックカンセイの売上高と営業利益
(注: 2017年3月期の営業利益は非公表)

 こうした強みのある技術を武器に、新たな顧客層の開拓を急ぐ。今年9月に策定した21年度までの中期経営計画では「日産一極依存から多様な顧客層への拡販」を掲げ、内製品の売上高に相当する「付加価値売上高」に占める日産以外の比率を現在の20%から30%に引き上げることを目標に据えた。

 10月には佐藤常務がトップとなる「商品企画室」を新設。各事業部門から兼務者を含めて20人超の部課長級のエースを集め、新たな顧客の獲得につながる技術の掘り起こしを進めている。

 日産系列から外れ、「独立系」の部品メーカーになったことで切り開ける市場も見えてきた。その一つがサイバーセキュリティー市場だ。

 自動運転技術の導入に合わせ、車がやり取りする通信量はこれから飛躍的に増えていく。だが、クルマがネットにつながれば、その分、サイバー攻撃を受けるリスクも高まる。コネクテッドカーがテロリストから乗っ取られる可能性を指摘する専門家の声は多い。

 そこでカルソニックカンセイは7月に仏セキュリティーベンチャーと折半出資でサイバーセキュリティー子会社「ホワイトモーション」を立ち上げた。部品メーカーであるカルソニックカンセイにとっては「飛び地」に見える事業だが、系列に縛られない独立系であるところに勝算を見いだした。

 サイバー防御に関する情報は秘匿性を高める必要がある。脆弱性が漏れれば身代金を要求する「ランサムウエア」のような金銭目的の攻撃の的にされるし、防御が堅牢だと広まるだけでもハッカーの功名心をあおるからだ。だからこそ、「どこの自動車メーカーの資本も入っていないカルソニックカンセイの方がビジネスをしやすい」とホワイトモーションの蔵本雄一CEO(最高経営責任者)は話す。

 実はこの蔵本氏はセキュリティー業界では知る人ぞ知る存在だ。前職は日本マイクロソフトでセキュリティーの啓蒙活動に取り組んできたキーマンの一人。クルマのサイバーセキュリティーに関連するヘッドハンティングを数社から受けていたが、蔵本氏はカルソニックカンセイに新天地を求めた。「クルマの構造に関する知見と、独立性。世界を見渡しても2つの条件を満たしているのはここしかない」と判断したのだ。

伝統製品にも再成長のシナリオ

 EVやコネクテッドカーなど新分野への布石を着々と打つ中、忘れてならないのはEV時代になれば需要縮小が避けられない部品事業も多く抱えていることだ。18年に創業80年を迎える同社はもともと排気系や熱交換器といったエンジン車で不可欠な部品に強みがあった。

 だが、こうした伝統製品でも再成長のシナリオを練る。キーワードはM&A(合併・買収)だ。排気系や熱交換器は設備コストが大きい分、参入障壁は高い。森谷弘史社長は「市場の拡大が期待できる新興国では、ガソリン車がしばらく主力になる。残存者利益を取っていくことが重要だ」と指摘する。撤退する企業を吸収して競争相手を減らせば、自動車メーカーに対する発言力を高められる。「価格交渉だけでなく、新規の設備投資を抑制するように開発を主導することもできる」

 そんな戦略を可能にするパートナーこそ、今年3月に親会社となったKKRだ。「M&Aの資金は十分に提供する。日産と買収契約を結んだ時の約束だ」。KKRジャパンの平野博文社長はこう言い切る。