損保事業や銀行事業も同様だ。損保では、対面販売ではなく通販型をあえて主力とし、ダイレクト自動車保険分野で、2014年度まで13年連続で売上高1位を記録(ソニー損保調べ)。銀行事業でも、ネット銀行ならではの低コストを前面に出し、実勢に近いレートで柔軟に外貨取引ができるサービスなど既存の銀行が提供していない独自の金融商品を次々と打ち出してきた。

勝利の方程式が生きる分野

 こうして生保、損保、銀行と、既存事業者の旧態依然とした部分を突くことで新境地を切り開いてきたソニーFHが、第4の新天地として白羽の矢を立てたのが、金融分野以上に古い価値観と慣習が支配する介護事業だった。

 きっかけは、ソニー生命のライフプランナーが、「いい介護事業者を紹介してほしい」などと顧客から相談を受ける機会がここ数年、急増してきたこと。それだけ利用者を満足させる既存事業者が少ない証拠だと判断したソニーFHは早速、市場調査や人材育成などを開始。「徹底的な顧客視点など、既存の介護サービスにない価値を提供していくためのノウハウを蓄積してきた」(ソニー・ライフケアの出井社長)。

 例えば、祖師ケ谷大蔵の新しい介護施設にはケアマネージャーだけでなく、「ライフマネージャー」と呼ぶ役職の人材を配置する計画。既存の介護施設にはいない、ライフプランを考える専任人材を置くことで、より充実した老人ホーム生活を入居者に送ってもらうのが狙いだ。

 「金融の3事業と介護は一見、異分野に映るかもしれないが、いずれも『人間の半生をサポートする』という当社の経営方針に明確に当てはまるビジネス」とソニーFHの井原勝美社長は説明する。

 ソニーFHは今、さらに競争力を強化すべく2つの施策に取り組んでいる。一つは、生保、損保、銀行、介護のそれぞれで一層、既成概念を打破するサービスを投入し続けることだ。

 損保事業では、専用のドライブレコーダーを使い、安全運転をする契約者にはキャッシュバックをする斬新な自動車保険を2015年2月に発売した。「日本で初めての運転特性リスク細分型の損害保険として、話題性は強く、引き合いも増えている」と、ソニー損保の丹羽淳雄社長は自信を見せる。

 一方、看板商品となった外貨取引や、ネットと対面式を組み合わせた住宅ローンなど、国内初のサービスで評価を高めてきた銀行事業も、「既存の銀行がやらない商品開発で顧客層をさらに広げる」(ソニー銀行の伊藤裕社長)。

顧客の要望に応じソニーグループの金融サービスを紹介
●生保事業を中核に金融分野のシナジーを強化する
顧客の要望に応じソニーグループの金融サービスを紹介<br /><span>●生保事業を中核に金融分野のシナジーを強化する</span>
注:ソニー不動産はソニーFH傘下ではなく、ソニー本体の子会社

生保を中心にシナジー追求

 ソニーFH内での事業間連携が、2つ目の施策だ。成長を続けるソニーFHグループの事業別の収益構造を見ると、生保事業がソニーFHの売上高の9割を占める。これまでは個別に事業強化をしてきたが、今後は、優良顧客を多数抱え、強力な販売チャネルとなっている生保事業のライフプランナーを、損保や銀行などの他事業の販路として戦略的に活用していく。

生保事業が経常収益の9割を占める
●ソニーFHの経常収益の構成比(2014年度)
生保事業が経常収益の9割を占める<br /><span>●ソニーFHの経常収益の構成比(2014年度)</span>

 そのために、現在は4300人程度のソニー生命のライフプランナーを2017年度までに4600人超に増加させる。採用と育成スピードを加速させ、現状は年100人増のペースを今後、年150~200人増くらいまでに上げる。そして、ソニー生命の拠点がまだない県にも支社を置くなど、グループの中核となる生保事業の営業基盤を強化する。

 「ライフプランナーに寄せられる相談は、生命保険だけにとどまらず、自動車保険の見直し、住宅ローン、外貨運用のアドバイスなど、幅広くなっている。これら金融商品の相談をワンストップでできるライフプランナーは、ソニーFHグループの大きな武器になる」(ソニー生命の萩本友男社長)。萩本社長は2017年度の先も見据えており、早期にライフプランナーを6000人態勢とする意欲を持つ。

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