それにしてもなぜソニーが老人ホーム経営に乗り出したのか。それを理解するためには、まず生命保険から始まった、ソニーグループの34年間にわたる金融事業の歴史を知る必要がある。

ソニーの新分野開拓の集大成

 言うまでもなく、ソニーの祖業は、ポータブルラジオやウォークマンなど一世を風靡したエレクトロニクス事業。が、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏は、信用力や事業ポートフォリオを強化するには金融分野へ進出する必要があると考えていた。実際、1950年代後半には「グループでいつかは金融機関を持ちたい」と盛田氏が夢を周囲に語り始めたと言われている。

 その長きにわたる構想が実現したのが1981年。米保険大手プルデンシャル生命保険との合弁でソニー・プルデンシャル生命保険(現ソニー生命)を設立し、営業を開始した。そして99年には生保に続き損害保険に参入。2001年には、インターネット専業銀行として銀行業へ参入した。

盛田昭夫氏の夢が始まりだった
●ソニーの金融事業の歴史
(写真=Fujifotos/アフロ)
●ソニーFHの経常収益と経常利益の推移
●ソニーグループの事業ごとの営業損益

 100%子会社の生保や損保、銀行の3事業はいずれも堅調に成長。2014年度のソニーFHの連結決算は、経常収益が1兆3523億円で経常利益が900億円と、いずれも過去最高の業績を記録した。ソニーグループの各事業と比較しても、利益額は突出する存在だ。

 介護事業は、こうした新分野開拓で培ってきた「勝利の方程式」が結集されている。一言で言えば、既存事業者ではできない古い慣習の打破だ。

 例えば生保は、富裕層を中心に受け入れられ、今や保有契約高は国内5位の40兆円規模(2014年度末時点)に達している。後発だったにもかかわらず大手の一角に食い込めたのは、国内の保険業界で当たり前と考えられていた慣習を完全に否定したからだ。

 その代表例が、他社とは全く異なる販売手法。メニュー化された汎用的な保険商品を女性販売員を中心に営業する体制だったのが既存の国内生保企業。ソニー生命はこれと一線を画し、「ライフプランナー」と呼ぶ男性の保険コンサルタントを育成したのだ。さらに、汎用的な保険を売るのではなく、顧客の家族構成や人生計画などをコンサルしながら顧客ごとに保険商品を設計して販売する斬新なスタイルで参入した。