ウイスキーを拡販したいサントリーとのコラボレーションで、2009年に考案した。強い炭酸、レモンの酸味、そして氷を大量に入れたハイボールはたこ焼きとの相性が抜群だった。当時始まったサントリーのCMとの相乗効果もあって、銀だこハイボール酒場は大ブレークしたのだ。

 「ハイボール酒場のヒットで、既存店にも良い影響が出た。晩酌のお供にたこ焼きが選ばれるようになった」と佐瀬社長が語る通り、たこ焼きを食べるシーンをさらに広げることに成功した。

 これを機に、ホットランドでは店舗の立地に応じた業態展開に注力するようになった。テークアウトが主力の「築地銀だこ」は、駅前中心に展開し、帰宅途中の人々に照準を合わせる。たこ焼きをパンケーキやかき氷などのスイーツと一緒に提供するイートイン型の「銀だこカフェ」は、住宅の多い場所で主婦や学校帰りの学生を狙った業態だ。

 効外ではドライブスルーや宅配も展開する。「宅配銀だこ」は、一人暮らしの高齢者でも気軽にたこ焼きを食べられるようにとの配慮から始めた。高齢者が多く住む東京・高島平などで好評を博している。ファミリー層による注文も増えており、伸び盛りの業態だ。

立地に応じて業態を変え、需要開拓
●ホットランドグループにおける出店戦略
立地に応じて業態を変え、需要開拓 <br/>●ホットランドグループにおける出店戦略
 たこ焼きを「強い単品」に成長させたホットランドが、次に注力しているのが2番手、3番手の強い単品を作り上げることだ。
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 たこ焼きを「強い単品」に成長させたホットランドが、次に注力しているのが2番手、3番手の強い単品を作り上げることだ。

買収でアイス事業にも参入

 様々なチャレンジを行い、どら焼きやパンケーキなど撤退したものも少なくない。それでも、たい焼きチェーン店の「銀のあん」は当たった。2013年から展開している、24層に焼き上がるクロワッサン生地を使って作った「クロワッサンたい焼」は、若い女性の心をつかみ、ヒット商品となった。

 ここでも、銀だこスタイルは堅持されている。契約農家から調達した小豆を自前の工場であんこに仕上げる。たい焼き機は、5分という短時間で焼けるよう、両面から一気に加熱できるものを独自に開発した。一度に大量に出来上がるたこ焼きは時間をかけても構わないが、たい焼きは量をさばくために効率的に作る必要があるからだ。

 昨年1月には、米国の人気アイスクリームチェーン「コールド・ストーン・クリマリー」の日本法人を買収した。アイスクリーム事業への参入は、季節変化による売り上げのブレを解消する狙いがある。たこ焼きもたい焼きも、業態の幅を広げることで需要拡大に努めてきたが、ホット商品だけに真夏には需要が落ちる。銀だこで夏にアイスキャンディーを売るなどしてきたが、訴求力はいまいちだった。暑い夏に強い商品は、ホットランドのポートフォリオに必要不可欠だった。

 コールド・ストーンのアイスクリームは、銀だこと同じように客の前で作る実演販売スタイルだ。このことも買収への大きなインセンティブとなった。コールド・ストーン事業にも銀だこスタイルを適用し始めている。将来、原材料の牛乳も牛を育てることから始めるつもりだ。

 5月26日には、イオンモールと合弁会社を設立してカフェ事業に進出する。季節や時間帯を問わず一定の売れ行きがあるコーヒーや紅茶は、収益の底上げに貢献するだろう。アイスクリームやクロワッサンたい焼と組み合わせれば、シナジー効果も期待できる。

 ホットランドがカフェ事業のパートナーとして選んだのが、米国最古のカフェチェーンで、ロサンゼルスが本拠地の「ザ・コーヒービーン&ティーリーフ」。スターバックスコーヒーよりも高価格帯のカフェチェーンだ。

 日本には、コーヒーと紅茶を両方楽しめる本格的なチェーン店がない。それだけに、ホットランドはコーヒービーン事業を大きく育てるつもりだ。5月下旬に東京・日本橋に、50坪ほどの1号店をオープンする。「友人の有名パティシエ、鎧塚俊彦氏の監修の下、スイーツや軽食も日本人向けにアレンジした。価格は高いが、それに見合ったおいしいものが食べられる保証はある」と、佐瀬社長は自信を見せる。

 2014年以降、事業拡大のスピードが上がったのは上場で資金調達力が付いたからだ。佐瀬社長は今年6月、ロンドンで開催される大和証券の海外IRフェアに初めて参加する。時価総額1000億円以上の企業が勢ぞろいする中、参加を許された特別待遇だ。それだけ、多くの投資家がホットランドの成長力と佐瀬社長の経営手腕に関心を寄せている。

 佐瀬社長は海外IRの場で、外国人投資家にもたこ焼きを試食してもらうつもりだ。食べれば自分たちの強さを実感してもらえるという自負がある。

【INTERVIEW】
ホットランド・佐瀬守男社長に聞く

たこ焼きは世界に通用する日本食

 たこ焼きこそ、タコを一番おいしく食べる方法であると、私は信じて疑いません。エスカルゴの最もポピュラーな食べ方が、にんにくとハーブの入ったバターと合わせて食べることであるように、どの素材にも最強の料理方法があります。タコの場合、それがたこ焼きなのです。これは世界に通用すると確信しています。

 海外でタコは「デビルフィッシュ」とも呼ばれ、忌み嫌われてきた存在です。だから、海外でたこ焼きを売るのは難しいと、タコ以外の素材で試したこともありました。でも、エビやホタテだと食感が軟らかすぎて「中身入っていたっけ?」となっちゃう。イカを入れると、臭いが強すぎてイカ臭くなっちゃう。あの歯ごたえと存在感は、タコでなければ実現できないのです。

 実際、中東のドバイで試食会を開き、周辺の40カ国の人にたこ焼きを食べてもらいました。「悪魔の魚」なんて心配は何のその、40カ国中39カ国の人が大喜びで食べてくれました。「これは世界でもいける」と確信しましたね。

 特に、中東やアフリカの国の人々は「ソースがおいしい」と絶賛してくれました。それもそのはず、おたふくソースの甘味はあちらでよく食べられているナツメヤシの果実、デーツが原材料です。世界的に受け入れられるポテンシャルが、たこ焼きには備わっているのです。

 現在、築地銀だこは、アジア6カ国・地域に進出していますが、今年は米国進出も視野に入れて動いています。カハラ・グループという米コールド・ストーン・クリマリーを立ち上げた創業者が、コールド・ストーン事業をファンドに売却しました。創業者の2代目が、その資金を元手に、銀だこ事業を米国で展開する予定です。

 フランスでも良いパートナーが見つかりそうで、話が進んでいます。欧州でもまずはモナコ、フランス、スペインとタコを食べる国々からたこ焼きを広めていきたいですね。南から北へと攻めていきます。

ホットランド 佐瀬守男社長
ホットランド 佐瀬守男社長

 2013年10月にたこ焼きチェーン店「大釜屋」を買収したのは、この会社の持つ自動たこ焼き機を、海外展開で活用したいと思ったからです。

 実は一度、中国に10店舗ほど店を出して失敗に追い込まれた経験があります。1号店、2号店はうまくいったのですが、3店目以降はたこ焼きを焼き上げる技術の継承が難しくて味が守れず、繁盛しませんでした。

 今後は自動たこ焼き機を武器に、海外進出を加速させていきます。機械も改良を加えて、ゆくゆくは銀だこの味を完璧に再現していきたいですね。(談)

(日経ビジネス2015年5月18日号より転載)