日本の輸入量の1割を占める

 中でも、原料のタコに対するこだわりはすさまじい。築地銀だこでたこ焼き1個当たりに使われるタコは、重さ7gと決まっている。この重さがないと、歯ごたえのある食感が維持されないのだという。

 ホットランドは2011年まで、タコの調達を商社任せにしていた。しかし、為替や需給環境によって調達量や価格は変動する。そのたびに利益が変動してしまうようでは、経営に影響が出るうえ、1皿550円という販売価格を維持することも難しくなる。

 安定的に利益を出すためには川上をしっかり押さえたい。だが、タコを日常的に食べる国はもともと少ない。アジアでは日本と韓国、そして欧州では、地中海に面している数カ国くらいだ。世界的に需要が少なかったゆえに、供給ルートがこれまで開拓されてこなかったのだ。

 加えて日本はタコの輸入のほとんどをアフリカに依存している。欧州市場の買い付け先でもあるだけに価格が高騰気味で、日本勢は買い負けることも少なくなかった。乱獲の影響で、近年は漁獲高も減少傾向にある。

 ホットランドが仕入れるタコは年間で2000トン以上。店舗数の増加に伴い、日本の輸入量に占める割合は5~6%にまで上昇した。こうした要因が重なり、タコの調達は年々難しくなっていた。

 これ以上値上げが続けば、顧客の支持が得られなくなる。そこでホットランドはアジアや中南米に出向き、新たな調達ルートを5カ所開拓した。ペルーのように、地元の漁民にタコ壷を使ったタコの捕り方を指導し、調達にこぎ着けたケースもあった。「たこ焼きだけで勝負すると決めたからこそ、とことんタコにはこだわる必要があった」(佐瀬社長)のだ。

 将来を見据え、世界でまだ誰も成功していない陸上での真ダコの完全養殖にも挑戦している。2013年4月より年間約2000万円を投じ、宮城県石巻市の石巻水産研究所で宮城大学、東海大学、東北大学、石巻養殖業者と合同で研究を進めている。このプロジェクトは、国からの補助金も得ている。

 卵からふ化した稚ダコは体長2cmに成長するまでの2~3カ月間、水中に浮遊した状態で生活する。2cmを超えると着底生活に移行し始め、親と同じ貝類や甲殻類などを捕食して生活するようになる。脚の吸盤数が20個になったときが、移行の目安だという。

 真ダコはふ化してから着底生活に入るまでの過程がまだ完全に解明されておらず、完全養殖を成功させる上での最大のハードルとなっている。現在、石巻水産研究所では餌や塩分濃度、水温などの諸条件を変えて、タコが育つ最適環境の解明に努めている。

サントリーと組んで需要喚起

 既に、体長6mm、吸盤数10にまでタコを育てることに成功、数年以内に完全養殖技術を確立させることを目指している。「完全養殖に成功して特許を取得できれば、生のタコをブランド化して販売するなど、ビジネスの幅も広がる」と、石巻水産研究所の松原圭史所長は目を輝かせる。

 3月には、熊本県上天草市の漁協と提携する形で、新たな養殖研究拠点を確保した。上天草には真ダコが生息している。実際の生育環境に近い、暖かい場所で育てたほうが、完全養殖も成功するのではないかと踏んで、研究拠点を増やすことを決めた。

数年以内に完全養殖技術の確立目指す
●ホットランドのタコ養殖の研究拠点
数年以内に完全養殖技術の確立目指す <br/>●ホットランドのタコ養殖の研究拠点
[1]体長6mmまでに育ったタコの幼生
[2]タコをいけすの中に入れ、大きく育てる「蓄養」の様子。タコ壷一つひとつにタコが生息する
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 銀だこスタイルの徹底と同じくらい、ホットランドが注力するのが「需要の開拓」だ。ここでも、売り上げを増やす工夫が随所に施されている。

 1997年に築地銀だこをスタートさせた際、オフィス街は賃料が高い割に、売り上げが伸びないのが大きな悩みだった。何か良い方法はないかと思案した末、たどり着いたのがたこ焼きを酒のつまみにしてしまうことだった。ウイスキーを炭酸で割って飲むハイボールと、たこ焼きを立ち飲みスタイルで提供する「銀だこハイボール酒場」という業態を立ち上げたのだ。

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