ヘルスケアでも下克上狙う

 エレコムのハイレゾ対応イヤホンは、税込み4300円前後と8000円前後のモデルが中心。低価格かつ高品質が受け入れられ、ソニー、オーディオテクニカという2強を押しのけて昨年末には販売数量でシェアトップに立った。

 「アマゾンなどの通販サイトやオーディオ誌などのレビューでは、他社が販売する2万~3万円台のイヤホンと同等という評価を得ている。『Z3』の発売に合わせて、ソニーがハイレゾを押してくれていたことも追い風となった」。開発を指揮したエレコム商品開発部の生き字引的な存在、福良卓二次長はこう話す。

 イヤホンは低価格化が進み、今では100円均一ショップでも購入できるようになった。家電量販店でも売り上げが落ち込み、各社が興味を失う中、「やるかどうかの判断のタイミングがよかった」と福良次長。次に狙うのが、スマホなどと無線で接続して使うブルートゥース対応スピーカーだ。

 ソニーとBOSEが圧倒的にシェアを押さえる市場で、ハイレゾ対応イヤホンと同じく、下克上をしようと福良次長は燃えている。

 「おいしそうな市場だから取りにいく。そして我々ができそうだ。個人的な思いは『面白いから』。だって、エレコムがハイレゾでシェアトップってわけ分からないじゃないですか(笑)。なかなか味わえない快感」

 もう一つ、エレコム開発陣が下克上を画策する市場がある。ヘルスケアだ。

 昨年5月、難聴者向け補聴器「やさしい補聴器」を発売した。ただし、補聴器は第2種医療機器製造販売業の許可が必要なため、OEMという形で調達した。その後、開発現場が「やるならライセンスを取って本格的にやるべき」と主張。今年2月に子会社エレコムヘルスケアを設立、第2種医療機器の許可を5月に取得した。

 7月には、こめかみと後頭部を刺激し、目の疲れを癒すリラクセーション機器「エクリア アイフレッシュ」を発売。全国の家電量販店に展開するなど、滑り出しは好調だ。商品開発部エレコムヘルスケア課でチームリーダーを務める岩本修氏の鼻息は荒い。

 「まだヒットの芽を探っている段階。ただ、量販店などのバイヤーからは市場活性化につながると受けが非常にいい。(発売済みの)活動量計に加え、各種計測診断機器、美容機器など、あらゆるものを開発し、ライフスタイルを一貫でサポートしていく。中期的に100億円は作りたい」

ヘルスケア、高級オーディオへ
●拡大する事業領域
ヘルスケア、高級オーディオへ<br/>●拡大する事業領域
既存事業
パソコン関連アクセサリー
マウス、キーボード、USBハブなど
周辺機器
外付けHDD、無線LANルーターなど
スマートフォン/タブレット関連アクセサリー
ケース、ヘッドセット、モバイルバッテリーなど
新規事業
高級オーディオ
ハイレゾ対応イヤホンなど
ヘルスケア関連
リラクセーション機器「エクリア アイフレッシュ」(右)、補聴器(中)、活動量計(左)など

 こうした新規開発は、あくまで現場主導で行われている。ただし、大きな方向性を定めるのは葉田社長だ。成長の根底には、葉田社長が強烈に抱く「危機感」と「起業家精神」がある。

中国に200店舗の「ショップ」

 「業績は過去最高だけれども、社内は暗いですよ。誰も喜んでいませんよ。まだまだ、全然、人材も足りませんし、技術も足らないし、世界に打って出ていないし、やることは山ほどある」

 葉田社長の心は常に満足しない。どころか、不安で満たされている。今、稼ぐことができている業界がいつ吹き飛ぶか分からないと思っているからだ。

 それは、スマホアクセサリーという、エレコムでは成長著しい分野も例外ではない。だから新たな分野への挑戦をやめることはない。そして、常に自らを新参者、挑戦者と思い、失敗を恐れない。葉田社長は言う。

 「常に、自分はアホやと思っている。アホやから知らんものは知らんし、常に学び続ける。失敗しても、新しいナレッジを得て、自分の視野が広がったら、楽しいじゃないですか」

 失敗を恐れず前へ向き続ける姿勢は、海外進出に象徴される。実はエレコムの海外進出は失敗の歴史の繰り返しだ。

 2003~04年にかけて、英国、韓国、中国、ドイツ、イタリアにそれぞれ現地法人を設立し、海外市場の開拓を本格化させた。しかし2015年3月期の連結売上高のうち、98.4%が日本と内需依存から脱却できていない。

 それでも葉田社長は諦めない。今年、海外展開に関して大きな戦略転換をした。欧州は事実上、撤退。代わりに、アジア、とりわけ中国市場の攻略に集中する。今年末から数年かけて、人口50万人以上の中規模都市以上に200店舗の「エレコムショップ」を一挙展開する計画だ。上海・北京といった大都市では直営方式を取り、中小規模の都市ではパートナー経由で出店する。「中国はみんなが撤退しているから逆にチャンスだと思っている」(葉田社長)。

中国市場に大攻勢
●「エレコムショップ」の主なアジア展開
中国市場に大攻勢<br/>●「エレコムショップ」の主なアジア展開
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