80人が年間4000点以上開発

 エレコムが販売している商品数は、型番ベースで約1万7000点。年間で4200~4300点が新規開発され、3~4年でほぼ全商品が入れ替わる。

 そのほとんどの開発を、約80人の開発部門のコアメンバーが担う。単純計算で、1人当たり年間50点以上を開発していることになる。

 例えば、商品開発部でスーパーバイザーを務める島村晃氏はこの数年、SDカードなどを読み書きするカードリーダーライターやUSBハブなど5~6カテゴリー、年間数十点の新規開発を続けてきた。日本大学芸術学部卒業後、入社2年目の2005年にグッドデザイン賞中小企業庁長官特別賞を受賞。以降、6年連続でグッドデザイン賞を獲得した異才だ。

 商品の企画・設計・デザインからメーカーへの発注を手掛ける島村氏だが、彼の仕事はこれに終わらない。

 9月中旬、島村氏はエレコム製の通信ケーブルを売り込むため、某携帯電話会社への営業に同行した。iPhone新機種の発売で需要が増すタイミングでの受注増を狙った。こうした営業支援は日常茶飯事のことだ。

 開発した商品の製造委託先への発注量を見誤り、在庫がだぶつけば、量販店の担当者に自ら電話をかけて掛け合う。必要とあらば、店頭で商品を展示する専用什器も作る。8月末には、大手家電量販店向けにスピーカーの店頭紹介用什器を設計して設置した。

 さらに驚かされるのは、自らが開発した商品の収支責任まで負っているということだ。島村氏は言う。

 「僕の給料は売り上げの達成率で決まる。だから商品を開発する時は一つの事業と捉え、収支や営業戦略を考えながらデザインや設計コンセプトを決めていく。ほとんどのことを、自分一人でできちゃう感じがします」

 このエレコム独特の開発体制について、開発部門を統括する梶浦幸二・常務取締役商品開発部長は、「80社の個人商店を抱えているようなもの」と表現する。「各自には生み続けないといけない苦しみがある。失敗したら自己責任。給与が減るだけ」。

80人の開発担当は何でもやる「個人商店」
●エレコム開発部門の業務範囲
80人の開発担当は何でもやる「個人商店」<br/>●エレコム開発部門の業務範囲
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 圧倒的に多い商品点数に加え、業務の幅も広く、開発担当には大きな責任と重圧がのしかかる。競合他社などから来た人間が面食らうのも無理はない。エレコムの中で開発部門は、重圧に耐えられず辞めていく人間が最も多い。

 それでも80人が育ち、残り、高速で開発し続けることができているのは、なぜか。梶浦常務は言う。

 「責任範囲は大きいが、それだけ自由ということ。こんなにやりたいようにやれる会社はほかにない。だから、自己実現のために新たな人材もひっきりなしに来るんです」

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