日本とイスラエル

水と油でも補完関係

欧米や中国と比べると周回遅れの観が否めない日本のイスラエル投資。互いの国民性は補完関係にあり、有望なIoTベンチャーとの協業は有力な選択肢だ。

 「ドラゴンボールのアニメを見て日本語を勉強しているよ」。イスラエルのスタートアップ企業、ザ・エレガント・モンキー(TEM)のマーヤン・ヤジディーCEOは人なつっこく笑う。

 同社は村田製作所による新事業のアイデアを募るコンテストの優勝企業。村田製作所のセンサーを使ったヘルスケアシステムを提案した。両社は9月に提携し、「まだ詳細は明かせないが、心理ストレスがどう変化するか予測し、解消する製品を作る」(ヤジディー氏)。

村田製作所が昨年開いた新規事業コンテスト。優勝したスタートアップと手を組んで、ヘルスケアIoTに乗り出す

 TEMが日本市場に目を向ける理由は2つ。一つは「ストレスをため込みがちな日本が一番重要な市場だから」。もう一つは日本のモノ作りへの期待だ。「イスラエルのソフトウエアに日本の精緻な製造技術を組み合わせれば、素晴らしいサービスが提供できる」(ヤジディー氏)。

 イスラエルを拠点にしたスタートアップ専門メディア「ギークタイム」を運営するモラン・バー氏は「イスラエルはマーケティングや大量生産、ハードウエアの作り込みは得意じゃない。こうした部分を補完するパートナーとして日本は理想的だ」と話す。

日本含めアジア各国に秋波

 2年前からイスラエルに居を構え、現地スタートアップ企業の紹介サイトを運営するエイニオの寺田彼日(あに)CEOは「村田とTEMが成功のロールモデルになってほしい」と期待する。

 下の表「●日本企業による主なイスラエルへの投資例」のように、安倍晋三首相が昨年イスラエルを訪問した後、日本企業のイスラエル投資は活発になっている。イスラエルとしても、これまで欧米への依存度が高かった状況を変えるため、アジア各国へ秋波を送っている。

安倍首相の訪問後に加速
●日本企業による主なイスラエルへの投資例
2014年2月 楽天が無料通話アプリのバイバーを9億ドルで買収
2014年5月 イスラエルのネタニヤフ首相が来日
2015年1月 安倍首相がイスラエル訪問
2015年2月 三井物産ヘルスケアIoTの
アーリーセンスに500万ドルを投資
2015年10月 ソフトバンクなどがサイバーセキュリティーの
サイバーリーズンに5900万ドルを出資
2015年12月 両国が投資協定で実質合意
2016年1月 ソニーがLTE通信向けモデムチップのアルター
セミコンダクターを買収
2016年2月 NTTドコモがネット通販向け詐欺予防システムの
リスキファイドに出資

 だが、「欧米はもとより、中国と比べてもイスラエルでの日本の投資判断は遅い」(寺田氏)。

 米マイクロソフトはイスラエルのスタートアップ、プライムセンスの技術を使いゲーム機「Xbox」の動作センサー「キネクト」を開発。米グーグルもイスラエルの研究開発拠点で検索キーワードを先読みする「サジェスト機能」を生み出した。対して日本企業の具体的成果は、これまでほとんどない。

 日本企業の動きが鈍い背景として、アラブ諸国との摩擦に対する警戒感があると寺田氏は話す。「欧米、中国の企業から同様の心配を聞くことはない。偏った情報に惑わされず、イスラエルが本当にリスクの高い国なのか考えなければいけない」。

 まずはアラブ各国によるボイコット。当初はイスラエルの製品を取り扱う外国企業も対象になったが、イスラエル国内への投資を促進する政府機関FIICのジヴァ・イーガー長官は「なぜ270もの多国籍企業がイスラエルから撤退しないのか。ボイコットはもはや過去の概念」と主張する。

 エジプト、パレスチナ、ヨルダンがボイコットから離脱するなど包囲網は弱まっている。家庭用パソコンの原型「IBM PC」に搭載されたインテルのCPUはイスラエルで開発された。こうした世界標準の技術を拒むことは、アラブ各国も難しいからだ。