歩調を合わせるように、この間、サイバー攻撃が急増した。ドイツの研究機関によると、16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった。闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される。サイバー攻撃を請け負うサイトもあり、企業のリスクを闇市場が大きく増幅させている。

 アルファベイの閉鎖は闇市場の終焉ではない。あるセキュリティー企業関係者は「また次のシルクロード、アルファベイは生まれてくる」 と予想する。米当局はアルファベイの出品者の名前を一部公表したが「ドラッグや銃を扱う『マフィア』が中心で、高度なサイバー犯罪者まで追跡の手は及んでいない」(同)からだ。別の闇市場では、捜査当局をあざ笑うかのように、アルファベイと同じIDを再利用して出品を再開した事例もある。

<span class="fontBold">5月の世界同時多発サイバー攻撃ではドイツの鉄道も被害に遭った。掲示板は乗客に故障を伝えている</span>(写真=picture alliance/アフロ)
5月の世界同時多発サイバー攻撃ではドイツの鉄道も被害に遭った。掲示板は乗客に故障を伝えている(写真=picture alliance/アフロ)

 5月に発生した世界同時多発サイバー攻撃。米政府によると、150カ国で30万台規模のパソコンが「WannaCry(ワナクライ)」と呼ばれるウイルスに感染した。感染したパソコンのデータは暗号化され、解除のために「身代金」を支払うよう求められた。英国では病院での手術が中止され、ドイツの鉄道では発券機が故障した。

 過去最大規模のサイバー事件の震源地も、またダークウェブだった。ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる。NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった。

 世界トップクラスの諜報機関を出し抜くハッカー集団は、「フォーラム」と呼ばれるダークウェブの交流サイトを使い、ハッキングの技術などについて情報を交換している。

免許証の値段は「900円」

 国内でも日立製作所やホンダなど複数の企業がワナクライに感染した。悪意ある攻撃者が日本企業を標的にし始めたのは明らかだ。デロイトトーマツリスクサービスの協力を得て、記者は7月、ダークウェブを閲覧した。

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