公開されるウェブサイトは「氷山の一角」

なぜ「ダークウェブ」と呼ばれる?

 インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれている。

 水面下に存在するのが、一般には公開されていない「ディープウェブ」。IDとパスワードでログインするECサイトや、それを支えるデータベースなどが該当する。我々が多くの時間を過ごしている、米フェイスブックなどのSNSの個人ページも含まれる。

 ディープウェブの最下層には、通常のウェブブラウザーにアドレスを入力してもアクセスできない領域が存在する。これが「ダークウェブ」だ。下の年表に示すように、違法物の売買や、サイバー攻撃のための情報交換、窃取した機密情報の暴露などの犯罪行為に多く利用されている。

どうやってアクセスするのか?

 最も広く利用されているのが「Tor(トーア)」という匿名化ツールだ。複数のサーバーを経由して、利用者の素性と通信経路を隠すのが特徴だ。Torはもともと、弾圧政権下の民主活動家らを支援するために開発された。米海軍もそのプロジェクトに参加している。

 日本では、Torを使って他者のパソコンを乗っ取り、ネット上で犯罪予告をする「パソコン遠隔操作事件」が2012年に発生。警察はTorで隠された乗っ取り行為を見落とし、誤認逮捕が相次いだ。

どんなサイトがある?

 違法な薬物やウイルスを売るEC(電子商取引)サイトや、ハッカーらが情報交換をするフォーラム、殺人やサイバー攻撃の請負サイトなど、犯罪行為に関わるサイトが多いのが実情だ。

 一方で、弾圧や検閲を回避する目的のSNSも存在する。フェイスブックはダークウェブ上で、サーフェスウェブと同様のサービスを提供している。インターネット掲示板「2ちゃんねる」を模したものなど日本語サイトも存在するが、英語やロシア語と比べて数は多くない。

水面下に広大な「闇の空間」が広がる
●ダークウェブの概念図
サーフェスウェブ 通販サイト、企業や団体の紹介サイト、ブログ
ディープウェブ SNSの非公開ページ、ウェブメール、通販サイトの個人ページ
ダークウェブ 地下マーケット、ハッカーの交流掲示板、検閲を避ける目的のSNS
写真=Jurgen Ziewe/Getty Images
●ダークウェブに絡んだ事件
2013年

最大の闇市場「シルクロード」摘発

2015年

不倫交際目的の交流サイト「アシュレイ・マディソン」の3800万人の会員情報がダークウェブで公開

2016年

日本で、ダークウェブ上で銀行口座を転売していた男が逮捕

2017年

世界同時多発サイバー攻撃が発生

シルクロードの後継といわれていた「アルファベイ」など大規模ECサイトが相次ぎ摘発

闇の商人と捜査当局の攻防

 ダークウェブは通常の検索サイト経由ではたどり着けない、ネット空間でも特に隔絶した領域だ。アクセスするには、通信者の身元を隠す「Tor(トーア)」などの匿名化ソフトを利用する。複数のサーバーを経由するなどして通信経路を偽装するため、捜査当局は闇の取引を解明できずにいた。

 世界最大の闇市場の称号はもともと、13年に摘発された「シルクロード」のものだった。このサイトには当時、約1万4000点の違法物が出品されていた。その後4年間でダークウェブの脅威が急拡大したことは、アルファベイにドラッグなどが25万点以上、漏洩した個人情報などが10万点以上出品されていたことからも明らかだ。

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