5月に発生した世界同時多発サイバー攻撃の震源地となった「ダークウェブ」。銃や麻薬、サイバー攻撃用の「兵器」も売り買いされ、日本企業も標的になりつつある。拡大する脅威に対抗するためには、闇市場を監視してリスクを察知する必要がある。
(日経ビジネス2017年9月18日号より転載)

7月12日、タイ警察の拘置所で、拘留されていた20代のカナダ人男性が自殺した。男の名はアレクサンドル・カゼス。世界最大の“闇市場”として悪名をはせていたEC(電子商取引)サイト、「アルファベイ」の運営者として逮捕されていた。
その8日後、アルファベイのトップページが突如として書き換えられた。「THIS HIDDEN SITE HAS BEEN SEIZED(この闇サイトは制圧された)」。こんな文字が米司法当局や欧州警察機構のロゴとともに躍っていた。
アルファベイには4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた。通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え、仮想通貨のビットコインで決済をしていた。カゼスは2014年からアルファベイを運営して富を蓄積。タイに3軒の家を構え、伊ランボルギーニの高級車など20億円以上の資産を保有していた。
インターネットでは通信者の身元は記録され、追跡が可能だ。ではなぜ、4万人もの悪人が3年にわたって取引を続けられたのか。それを理解するにはアルファベイが存在していた、「ダークウェブ」と呼ばれる世界を知る必要がある。
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