イズミ、独自戦略で気を吐く

イズミは業界で数少ない好調組
●イズミの業績(小売事業)
イズミは業界で数少ない好調組<br/>●イズミの業績(小売事業)
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 復活を模索するGMS。その中にも、独自の取り組みで好調を保つ企業がある。広島県が地盤で、中国・九州地方を中心に「ゆめタウン」を展開するイズミだ。2016年2月期のGMSなど小売事業の売上高は6485億円、営業利益は276億円。2012年2月期に比べて売上高で27%、営業利益で35%増えた。 各ゆめタウンでは衣料、生活雑貨、食品など全ての売り場について、見直しが必要かどうか、週1回の会議で必ず検討している。この取り組みは10年ほど前に開始。通路に面し、来店客から見えやすい売り場を週単位で見直すことで、旬の商品を常に提案する。

<b>週1回の会議で売り場を見直し、季節の売れ筋を通路沿いに配置(上)。直営の子供服売り場の横にベビー用品のテナントを入れて相乗効果を狙う(下)</b>(写真=菅 敏一)
週1回の会議で売り場を見直し、季節の売れ筋を通路沿いに配置(上)。直営の子供服売り場の横にベビー用品のテナントを入れて相乗効果を狙う(下)(写真=菅 敏一)
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 7月下旬、九州地区の旗艦店「ゆめタウン筑紫野」(福岡県筑紫野市)では、エスカレーターを上がってすぐの通路前という「一等地」は水着コーナーだった。この場所は前の週は浴衣だった。少し奥に進んだ場所にランドセル売り場があったが、これがその後、エスカレーター近くに移った。8月のお盆の時期に帰省先を訪れた孫に対して、祖父母がランドセルを買い与える消費が見込めるからだ。他のGMS企業では、売り場を見直すのは、2週間に1度という例もある。大企業病に陥らず、各店舗に権限を委譲する、イズミの素早い意思決定がうかがえる。売れ残り商品を値下げ・廃棄する「ロス率」は他のGMSの衣料品が2~3割なのに対し、イズミでは9%台と低い。

 イズミは、GMSの直営の売り場とテナントを柔軟に組み合わせる手法にも定評がある。ゆめタウン筑紫野では直営の子供服売り場の近くに、ベビー用品店の「アカチャンホンポ」を入れて相乗効果を狙う。同店はライバルのセブン&アイHDグループの企業だが、イトーヨーカドーは、イズミが事業展開する地域ではほぼ出店していない。「アカチャンホンポは競争力のあるテナントと評価し、誘致している」(イズミの梶原雄一朗専務)という。

 他の多くのGMSは直営部分を維持することにこだわり、テナントゾーンと直営が分離されたショッピングセンターをつくる。このため、子供服など同じ種類の商品が離れた場所に並び、買い物がしにくくなる。結果として、売れ行きが鈍り、過剰在庫を抱えることになる。SMBC日興証券の並木氏は「直営売り場を減らし、テナントを巧みに組み合わせて配置するイズミの戦略は有効だ」と指摘する。

 ここにきて節約志向を強める消費者をとらえ、100円ショップやディスカウント店が勢いを増している。こうした中では、GMSの価格政策の中途半端さもアキレスけんになる。「低価格路線を目指すのか、価格は高めでも品質向上を追求するのか。明確な軸が求められる時代にいよいよ入ってきた」。ある流通関係者はこう指摘する。

 各社が模索するようにシニアの憩いの場になることも再生の糸口となり得る。だが単に休憩所や椅子、外食テナントを増やすだけでは不十分だ。ユニー・ファミマHDの上田準二会長(旧ファミマ会長)は、GMSの広大な売り場の一部を、温浴施設やホテルなどとして活用する案を披露したことがある。ユニーの佐古氏は「オフィスを誘致するなど、手の打ち方は他にも色々とある。上田氏のアイデアも頭に入れ、今後の在り方を研究する」と話す。

 衣食住という部門の組織の壁や既成概念を打ち破る発想が大切なのは確かだ。業態を抜本的に問い直せば、何でもそろう「総合スーパー」という名称はそぐわなくなる。逆説的だが、その時こそ、GMSの真の再生が実現することになるだろう。

(日経ビジネス2016年9月12日号より転載)