同社はもともと、米スタンスチュワートが開発したEVA(経済付加価値)と呼ばれる経営指標を1999年から重視してきた。これは、事業に投下した資本のコスト(負債と投資家の投下資本の加重平均利回り)を超える利益を上げられるかどうかを見るもの。この下地があったからこそIFRS適用に合わせて、幅広い分野での一体化にまで踏み込めたという。

適用企業の方が一貫して市場の評価が高い
●IFRS適用企業と東証1部企業全体の株価推移
注:IFRS採用企業と東京証券取引所1部(TOPIX)の株価の推移(累積リターン)。2011年4月末を100として推移を見た
出所:大和証券の資料を基に本誌作成

市場の評価受けるIFRS企業

 IFRSはM&Aの手掛けやすさがある一方で、日本基準より減損を厳しく迫られるなど企業にとっては、きつい面もある。だが、それこそが経営者を鍛える。「これから持ち株会社は、全社の事業ポートフォリオを絶えず見直し続ける必要がある。一方、傘下の事業会社は運転資本圧縮などで利益率、資本効率の改善を図らなければならない」。今年2月、欧州のビール4事業を約3300億円で買収したアサヒグループホールディングスの奥田好秀・常務取締役兼常務執行役員(CFO)は言う。

 世界市場で生き残る強さをつけるためだが、厳しい規律を求めるIFRSはその考えに合うという。今年1月には、ベビーフードの和光堂を中心とした食品事業の子会社をアサヒグループ食品に統合したが、同時に和光堂の本社は売却した。「今、不要なら持っておく必要はない」(奥田CFO)。M&Aで他社を傘下に入れても、戦略に合わなくなれば再び売却する。日本企業にもそんな時代が来るのは遠くない。

 世界市場を目指す強さを期待されているせいか、IFRS適用企業は市場から高い評価を受けている(上のグラフ参照)。一方で日本基準は、適用企業数こそ多いものの、中期的には小粒な内需系企業が中心になりかねない。単純には言いにくいが、このままいけば成長感の低い企業群の使う基準になる可能性さえある。両基準の明暗は日本企業の2極化を映し出そうとしている。

(日経ビジネス2016年8月22日号より転載)