かつて5割を誇った日本の造船業の世界シェアは今や20%台。三菱重工業など重工大手が構造改革に踏み出す中で、気を吐く専業メーカーがある。その名は今治造船。「4つの強み」を武器に「造船産業」最後のとりでとなるか。
(日経ビジネス2017年8月21日号より転載)

大勢の作業員が見守る中、合図とともに海水がドックへゆっくりと流れ込む。6月9日、今治造船の西条工場(愛媛県西条市)で開いた進水式。同社が社運を懸けて初めて建造した全長400m、幅58.5mの超大型船が海面に浮かび上がった。
積み込めるコンテナの数は2万個(20フィート換算)。国内で最大、世界でも最大級のコンテナ船である。発注したのは、海運大手の商船三井。電子機器や配管など設備の据え付け作業を経て、10月に引き渡す予定だ。
これほど大きなコンテナ船を建造できる技術を持つのは、世界の造船業界でしのぎを削る中国・韓国勢を含めてもごくわずか。そんな難易度の高い船を今治造船は商船三井と台湾の海運大手エバーグリーンから合計13隻受注、6月9日に進水した「一番船」を皮切りに2019年末まで連続して送り出す。
17年ぶりに新ドック
今治造船の勢いが止まらない。15年には国内勢で17年ぶりとなる新ドックの建設を発表。丸亀事業本部(香川県丸亀市)に約400億円を投じ、国内最大級の1330トンつりの門型クレーン3基を据え付けた。今秋に完成すれば(注*)、長さ600m、幅80mの新型ドックで、超大型コンテナ船を同時に1.5隻建造できるという。
(注*) この記事を雑誌「日経ビジネス」に掲載後、新ドックは2017年9月に完成した。
実は17年前の国内での新ドックも設けたのは今治造船だった。西条工場で当時としては最新鋭の設備を整えたが、「国際的な受注競争に参加し、海運大手から一括発注をしてもらうには、超大型コンテナ船を年10隻程度は建造できる体制が必要」(檜垣幸人社長)と巨額投資に踏み切った。
Powered by リゾーム?