この夏、こうした新興勢力の現場でも、増え続ける荷物と過酷な暑さなどから負荷は高まり、一部では遅配が発生。ヤマトが苦しい状況は、新興勢力にとっても克服するのが容易ではない。

 それでも、そこに商機を見いだし、ヤマトと佐川急便、日本郵便でほぼ寡占状態だった宅配市場に割り込もうとしている新興勢力とは。その素顔に迫る。

丸和運輸機関

食品スーパー向けで頭角 専用物流で効率化に強み

 6月上旬、アマゾンのウェブサイトで公開されているデリバリープロバイダのリストの一部が、ひっそりと書き換わった。「ジャパンクイックサービス」から「丸和運輸機関」へ。丸和はジャパンクイックサービスの親会社である。ある物流会社幹部は、「丸和としてアマゾンへのコミットメントを示した結果だろう」とみる。

 6月22日、日本経済新聞は1面で「アマゾン 独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」との記事を掲載。丸和が東京都心部でアマゾン向けに独自の当日配送網を構築すると報じた。それ以降、丸和は日経ビジネスの取材申し込みに対し、「一切対応できない」と固く口を閉ざした。アマゾン側から、箝口令が出されたようだ。

 丸和の設立は1973年。和佐見勝社長(72歳)が、それまで営んでいた青果店を「押してはいけない判を押した」ことで失い、残ったトラック1台で運送業を始めたのがきっかけだ。青果店で培った営業力を武器に、小売業向けに配送から倉庫の運営まで一括して手掛ける物流改革を提案。ドラッグストア大手マツモトキヨシの物流を一手に引き受けるなどして成長してきた。2014年に東証2部、15年に東証1部に上場。17年3月期の連結業績は売上高が672億円、営業利益が44億円で、3期連続の増収増益となっている。

 その丸和が、次の成長分野と位置付けるのが、食品スーパー向けの物流改革と、EC(電子商取引)向けの当日配送だ。いずれも、顧客企業向けに専用物流を構築することが特徴である。

 食品スーパー向けには、専用の物流センターを丸和が構築、運営し、店舗への商品納入といった物流機能を一括して請け負う。個別のスーパーのニーズに応じて、生鮮食品を産地から店舗に直送したり、店舗への納入時間を工夫したりして業務改革を提案。ネットスーパーの当日配送も担い、食品卸では十分に対応できない物流全体のコスト削減を目指す。

 一方、アマゾンなどEC事業者向けには、ネットスーパーなどで培った当日配送のノウハウを生かす。決算資料などによれば、「当日お届け110作戦」と銘打って東京23区を中心に仕分け拠点を作り、そこから丸和が宅配する体制を整備する。ドライバーの始業時間を午後3時にし、午後10時半までの間にトラックを2便出すといった工夫をすることで、長時間残業を避けつつ当日配送を実現する仕組みなどを検討しているもようだ。

 既に都内の一部では、アマゾン専用配送網の構築が進んでいる。7月7日、東京・新宿に住む女性は、アマゾンで注文した当日配送の荷物を、丸和の「クイック桃太郎便」の制服を着た男性から午後10時半までに2度、受け取った。

 ただ、こうした事業拡大には、ドライバーの確保が急務となる。そこで、中小の物流会社や個人運送業者を「AZ-COM丸和・支援ネットワーク」というサービスで、丸和の委託先として会員組織化していく計画だ。通常、荷主からの支払いは約90日後だが、丸和は20日後に支払うことで会員の資金繰りを支援。車両や燃料の共同購入や、スマートフォンを格安で利用できる定額制の通信サービスなども提供する計画だ。既に会員数は660社を超え、中期的に2000社、トラック数で2万台を確保する目標を掲げている。