1986年10月から日本テレビ系列で放送された人気テレビドラマ「あぶない刑事」。横浜・港署を舞台に、舘ひろし氏演じる鷹山敏樹と柴田恭兵氏扮する大下勇次のコンビの破天荒な捜査を軸に展開するこの刑事劇は、現役にこだわるミドルに年下上司を持つことの有効性を説く物語でもある。

(イラスト=竹松 勇二)
(イラスト=竹松 勇二)

 放送開始当時、30代だった2人の主人公も、最新作である2016年1月劇場公開「さらばあぶない刑事」では、白髪頭で定年目前の状況にある。だが2人は依然として捜査の最前線で拳銃を撃ち鳴らしながら悪党退治を続けている。一切の出世を拒み、現場にい続ける道を選んだからだ。

 そんな最新作で2人の上司となっているのは、30年前、2人の下に新人刑事として配属されてきた仲村トオル氏演じる町田透だ。2人のむちゃな仕事の進め方に対して苦言を呈する一方で、最大の理解者としてその活躍をあうんの呼吸でサポートする。

 無駄な会議が何より苦手、出世より成果をたたき出したい、まだまだ最前線で戦う自信がある──。そんなミドルにとって、「あえて年下上司を持つ」という選択が一考に値する戦略であるのは間違いない。

こんなミドルは 「年下上司」を持て
●「年上部下」として活躍できる中高年の共通点
こんなミドルは 「年下上司」を持て<br /><small>●「年上部下」として活躍できる中高年の共通点</small>
優秀な年上部下なら定年後も安泰
富士通グループの「伝説の男」が選んだ進路

 富士通グループでシステム基盤の構築を担う富士通エフサスに、伝説の男がいる。シニアエキスパートの田中一孝氏(64歳)だ。数多くの頓挫しかかったシステム開発プロジェクトを立て直してきた。今も経営陣や若手社員からの信頼は厚く、全国各地から依頼が舞い込む。

 現在の上司はサービスビジネス本部長の中元政英氏(55歳)。11歳年下だが、田中氏は「力とセンスのある人が上につけばいい。年下でも関係ない」と話す。

 田中氏は8年前までプロジェクト統括部長として辣腕を振るい、本部長就任の可能性もあった。が、実際には同期が本部長となり、それ以上の昇進の道が途絶えてしまった。

 それでも田中氏はくじけなかった。既に50歳の頃から「順調に昇進できなかった時に備えて、どんな場所でも生きていけるよう得意技を磨こう」と考えていたからだ。田中氏が磨こうと決めた得意技はシステム開発プロジェクトの品質管理。システム障害を防いだり、プロジェクトが遅延しないように工夫したりするのが任務だ。

 50歳を超えてからプロジェクトマネジメントに関する社内外の資格を取得した。同社では役職定年の1年前から、その後の働き方を考えるセミナーを実施しているが、それよりはるか前から、年下上司の下で生涯現役として働く準備をしていたのだ。

 「余人をもって代えがたい高度な技術力があり、業績に多大な貢献ができる方」。人事部の林博之シニアマネージャーはこう話す。

 中元本部長とは席も近く、かしこまった報告・連絡・相談はしない。「本部長と私には仕事の範囲と責任がある。その範囲内で済むことなら相談もしない約束になっている」(田中氏)。ゴルフや飲みに行くのも嫌いではないが、基本的に1人で楽しむことが多いという。

 来年でシニアエキスパートも定年になる田中氏がいま力を入れているのが他の中高年社員の人材育成研修だ。

 「役職を離任してから何ができるか考えても遅い。誰が上司となっても、自分の専門性を高めておけばよい、ということを伝えるのが自分の役割」と田中氏。自分の後を継ぐ人材を養成したい考えだ。