「AIは日本より中国が先行」

蘇州穿山甲機器人が開発する配膳ロボット(左)。同社は2006年に会長の宋育剛氏が設立(右)。13年からサービスロボットの開発を手掛ける(写真=町川 秀人)
蘇州穿山甲機器人が開発する配膳ロボット(左)。同社は2006年に会長の宋育剛氏が設立(右)。13年からサービスロボットの開発を手掛ける(写真=町川 秀人)
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 江蘇省昆山市のロボット産業園の一角にある倉庫には、人型の白いロボットが並ぶ。ここは蘇州穿山甲機器人(パンゴリンロボット)の倉庫だ。同社はレストランで使用する配膳ロボットやオフィスで使う案内ロボットなどを開発・製造している。今年2月には中国の新興市場に上場を果たした。

 既に配膳ロボットや案内ロボットのテスト出荷を終えており、年内に本格的な販売を開始する。今年だけで3000~5000台を、18年には2万台を販売する計画だ。中国国内だけでなく韓国、マレーシア、インドなどにも製品をテスト出荷しているという。

 同社は日本の電気通信大学と共同でロボットを開発中。同社の新型ロボットは、電通大との協力の成果として、レーザーでモノとロボットとの間の距離を測り、空間内の地図を自動作成する技術を装備する。

 さらに、機能は使われるものに絞り込んで採用する。「日本のロボットは5本の指が全部動くなど高い技術が使われているが、必要なものに絞り込んだ方が故障が少ない」と丁勁松・最高技術責任者は言う。同社の配膳ロボットは厨房から客のテーブルまで料理を運ぶものの、テーブルへの配膳は人が行う。確実に使える機能を使い、いち早く実用化する思想がうかがえる。

 サービスロボットを開発する2社に共通するのは、技術の向上に注力する一方で、必要な機能に絞ってコストを抑え、巨大市場を一気に押さえようとする思想だ。さらに当初から海外を念頭に置いていることも共通する。

 日本を知る中国の企業人は、品質なども含めた技術力で見れば、日本の方がまだ上と語る。中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)は高い技術力で定評がある。日本ではスマホで知られるようになったこの中国企業は、グループでチップセットも製造している。だが、ZTEジャパンの李明社長は「中国の半導体産業が成長したと言っても作っているのはまだ一部。やはり日本の技術力は高い」と話す。

 とはいえ、慢心は禁物だ。機械関連の日系企業幹部は「単純に技術面だけを見れば、日本企業が勝っている部分はまだ多い。ただ、昔は『安かろう悪かろう』だった中国企業の製品が、『品質はそこそこで低価格』に変わってきている」と打ち明ける。

 かつて高い技術力を誇った日本の家電やスマホ、ディスプレーといった産業はいずれも中国勢の後塵を拝する結果となった。日本メーカーの中国進出を支援するiAXの馮麗萍社長は、「今は日本企業が強い分野でも、油断をしていればスマホの二の舞いになりかねない」と警鐘を鳴らす。日本の製造業の進むべき道を改めて考える時がきている。

INTERVIEW
蘇州穿山甲機器人 丁勁松・最高技術責任者
良いアイデアはすぐビジネスに
(写真=町川 秀人)
(写真=町川 秀人)

 我が社は、会長を務める宋育剛が2006年に立ち上げた。当初は自動車用部品などを作っていたが、13年にロボットの開発に乗り出した。産業用ロボットの開発も考えたが、この分野は日本やドイツに強い企業が多く、進出は容易ではない。一方、サービス用のロボットは人とのコミュニケーションなどクリアすべき課題がまだ多いだけに、チャンスが大きいと考えた。

 2.28万元(約36万元)の家庭向けロボットや6万元(約96万円)の配膳ロボット、18万元(約290万円)の案内ロボットなどを製造している。大量生産の体制が整ったので、今年から本格的に販売していく。日本法人も立ち上げており、日本でも販売していきたい。

 現在は、私が大学院に通った電気通信大学と共同でロボットの開発を進めている。部品についてはやはり日本の技術力が高い。新しいロボットに搭載した障害物との距離を測るレーザーセンサーは日本製だ。同様の機能を持つ中国製品の価格は4分の1程度だが、信頼性などの観点から日本製を使っている。一方で音声認識のソフトウエアは中国の方が進んでいると思う部分もある。

 中国の良いところは、良いと思うアイデアをすぐに事業にしてしまうところだ。政府も、最初から統制するのではなく、悪いところがあれば管理していくという考えを持っている。最近は中国でも良い製品を作る民間企業が増えてきているように思う。日本の強みと中国の強みを組み合わせれば、より良い製品やサービスを生み出せると考えている。(談)