もちろん、アリババや京東が提供する支援サービスが中国事業のリスクをゼロにするわけではない。突然の法改正や政治リスクは依然として残る。それでも縮小が続く国内市場にとどまっているより、すぐ隣にある成長市場に打って出た方が成功のチャンスは大きい。

 中国ネット通販の巨人たちが、日本にラブコールを送り始めた。あとは日本企業がどう受けて立つかだ。タマチャンショップの田中店長はこう話す。「昔、アメリカンドリームという言葉がありました。これからはチャイニーズドリームの時代です」。

INTERVIEW
アリババ集団のダニエル・チャンCEOに聞く
「20億人の顧客抱える企業めざす」
(写真=菊池 くらげ)

新サービス「Japan MD center」(以下MDセンター)を始める目的は。

 「日本企業はこれまでもアリババの通販サイト『Tモール』を使い、中国向けのEC事業を展開してきた。ユニクロやマツモトキヨシなどが代表的な成功例だ。ただし、アリババがお付き合いする相手は日本企業の中国法人である場合が多かった」 

 「越境ECの本質は『日本にいる企業が、中国にいる消費者にモノを届ける』ことにある。経営資源の限られる中小企業には、ぜひMDセンターを使ってほしい。日本にいながらにして、未知の世界である中国市場にアクセスできるようになる」

1つの国に特化した出品・出店支援サービスを提供するのは日本が初めて。なぜ日本なのか。

 「中国人が商品に求める品質の水準が日々、高まっているからだ。品質では日本製品に強みがある。日本人が使うのと同じものを使いたい、日本の流行についていきたいという要求は非常に大きい」

 「例えば豆乳を使った食品やオーガニックなコスメ商品は今、中国で最も人気のある分野だ。良いものを発見する驚きや喜びを、中国の消費者に提供していきたい」

中国経済は成長が鈍化しつつある。

 「中国経済は今、(製造業などの)輸出志向型から、個人消費が主導する内需型にシフトしている最中だ。イノベーティブな企業が魅力ある商品を投入すれば、消費はまだまだ活気づく余地がある」

アリババが米ニューヨーク証券取引所に上場したのは2014年9月。現在の株価は80ドル前後と、最高値の約120ドルと比べると見劣りする。

 「アリババは『消費者ファースト、その次が従業員、その次が株主』というスローガンを掲げている。株式の短期的な上昇や下落よりも、いかに消費者のニーズを満たしていくかを重視している。MDセンターの開始で、より満足度の高いサービスを提供できる。顧客が満足すれば、市場の評価はおのずと定まってくるはずだ」

中国以外の巨大市場も開拓する
●アリババ集団のアジア戦略

 「アリババは今後、グローバル化を進めていく。現在、我々のサービスの利用者のほとんどは中国人。これからはアジア全域に事業範囲を広げたい。4月には東南アジア6カ国で通販サイトを運営する『ラザダ』の買収を決めた。この投資はアリババの将来を占う上で大きな布石になる。インドにもソフトバンクと共同出資する通販サイト『スナップディール』がある。MDセンターを通じて発掘した日本の逸品は、これら若い市場を開拓していくうえでも武器になる。今後20年の目標は世界で20億人のユーザーを抱える企業になることだ」

(日経ビジネス2016年6月20日号より転載)