中国人の消費行動を分析

 5月18日、東京都港区の虎ノ門ヒルズ。アリババが開いたMDセンターのお披露目会には、日本企業約200社のEC事業担当者らが集まった。

 「アリババは2016年3月期の流通総額が50兆円を超え、世界最大のEC企業になった」。こう切り出したのは、浙江省の本社から駆けつけたダニエル・チャンCEO(最高経営責任者)。「アリババの背後には何億人という中国人がいる。巨大市場への進出をぜひ支援させてもらいたい」。チャンCEOの冷静な語り口が新サービスに対する自信を際立たせていた。

 中国の消費者に日本企業の商品が届けられるルートには、アリババのサービスを経由する場合でも3つある。

 1つ目が、訪日した中国人が日本で買い物をして、個人で持ち帰ってからCtoC(個人間取引)のECサイト「淘宝網(タオバオ)」に出品するルートだ。日本企業にとっては、自社製品がどのように中国の消費者に渡ったか、いくらで売られているかを把握しづらいという難点がある。

 もう1つが、日本企業の中国法人が中国国内のBtoC(企業の消費者向け取引)の通販サイト「Tモール(中国名「天猫」)」に出品するケース。既にファーストリテイリングや資生堂といった大手企業が始めている。日本から正規輸入したり、現地生産したりした製品を販売する。

 最後が、中国国外から出品できるBtoC通販サイト「Tモールグローバル」への参加だ。日本から中国市場にアクセスできるため、中小企業や、大手でも本格進出前に「様子見」したい企業には魅力が大きい。アリババがMDセンターで主に掘り起こしたいのはこのルートでの拡販が見込める商品だ。

日本にいながらの「中国進出」も可能
●アリババを経由した日本製品の販売ルート

 出品者にとって大きな支援となるのが、ビッグデータを活用したきめ細やかな需要予測だ。アリババが運営する「タオバオ」や「Tモール」は4億人を超えるユーザーを抱えている。MDセンターは、これらの消費者が事前に入力している年齢や性別、所在地といった情報を把握。その消費者がどんな商品を検索して買ったのか、あるいは途中で買うのをやめたのかといった購買パターンを組み合わせ、分析する。

 例えば紙おむつ。アリババは、消費者が紙おむつを継続的に購入するようになるなど、購買パターンの変化からユーザー世帯で家族が増えた日を推定する。そこから逆算することで、子供の誕生を待つ消費者が、出産の何週間前から紙おむつの購入を検討し始めるかというデータを割り出す。

 アリババの調査によると中国の消費者の約80%は出産の17週前から紙おむつを検索し始める。逆に言えば、それより早く広告を打っても効果は小さいということだ。

 いざ子供が生まれたら、今度は新生児用から乳児用のサイズへの切り替えのタイミングも販促の重要なチャンスとなる。「中国人の赤ちゃんは、日本人よりも体が大きいことが多い。中国市場の実態を知り尽くしたアリババなら適切な販促方法を提案できる」(アリババ日本法人の藤堂泰樹氏)。

 日本企業がこうした需要を予測するには、現地に法人をつくり、地道に市場調査する必要がある。中小企業にそうした体力はない。大企業にとっても、上海など沿海部の需要動向は把握できても、内陸部までは分かりにくい。自社での調査には限界がある。