トヨタ自動車は総合力ランキングで13位から5位に上昇した。特筆すべきは、商品ブランドで対象となった小型車「AQUA(アクア)」の458位から195位への急上昇だ。

ドラゴンクエストの世界観をイメージした風景に「アクア」を走らせ、20 ~40代前半のドラクエ世代に車種のイメージ向上を図った
ドラゴンクエストの世界観をイメージした風景に「アクア」を走らせ、20 ~40代前半のドラクエ世代に車種のイメージ向上を図った

 アクアがブランド認知を高めた主な要因は、ゲームソフト「ドラゴンクエスト」を大胆に取り入れたテレビCMだ。2014年12月のモデルチェンジ以降、CMにドラゴンクエストの楽曲を使い始めたことが、20~40代前半のドラクエ世代の心を刺激した。

 アクアの広告宣伝を担当するトヨタマーケティングジャパン プロモーション室の齋藤隆幸主任は「主なターゲットがドラクエ世代と重なることから、その層に振り向いてもらい、ツイッターなどSNSでどう話題にしてもらえるかを意識した」と狙いを説明する。

 「地道な活動も知名度向上に寄与した」と齋藤主任が胸を張るのが「AQUA SOCIAL FES!!」と呼ぶ一般参加型のイベントだ。これは全国各地の海や川を清掃したり、生態系を壊す外来種を駆除したりして水辺の環境を守るというもの。開始から4年間で400回、延べ5万人の参加者を集めた。

 イベントではアクアの実車を置く程度で営業活動は一切行わないが、「顧客として想定している20~30代の参加者が多く、今後のクルマ選びの際にいいイメージを持って選択肢に入れてもらえる」(齋藤主任)。広告宣伝と草の根活動の双方がうまくかみ合っている。

「顧客との共創」でパナソニックが飛躍

 ビジネス市場(BtoB)編は、500の企業ブランドを対象に有職者2万224人に調査した。「先見力」「人材力」「信用力」「親和力」「活力」の5つの因子で「総合力」を評価している。

 1位は5年連続でトヨタ自動車となったが、着目すべきは2位のパナソニックだ。2014年の24位、2015年の4位から着実に順位を伸ばした。

1位は5年連続トヨタ自動車
●ビジネス市場編の「総合力」ランキング
順位 (前回順位) ブランド名
1 (1) TOYOTA トヨタ自動車
2 (4) Panasonic パナソニック
3 (4) Google
4 (3) ANA 全日本空輸
5 (17) SONY ソニー
6 (7) Apple アップル
7 (20) HONDA 本田技研工業
8 (6) SoftBank ソフトバンク
9 (9) セブン&アイ・ホールディングス
9 (32) Nintendo 任天堂

 「2011年、2012年と巨額の赤字を出し、もう一度自分たちの進むべき道を明確化した」。そう語るのはパナソニックのコーポレートブランドプランニング部の加藤知之部長だ。2期連続で7000億円以上の赤字を計上した同社が、進むべき道としてフォーカスしたのが、BtoB市場だった。2013年以降に取り組んだ主な施策は2つ。一つは事業領域を明確化したブランド戦略、もう一つは挑戦する姿勢を社内外に「見える化」することだ。

「住宅」「車載」などBtoBの事業領域については、ロゴ下に副題を据えて訴求。同社が社名下にこうしたロゴを付帯するのは初めてのことだ
「住宅」「車載」などBtoBの事業領域については、ロゴ下に副題を据えて訴求。同社が社名下にこうしたロゴを付帯するのは初めてのことだ

 パナソニックは「国内でも海外でも『家電メーカー』としてのイメージがずっと強かった」(加藤部長)。当時、テレビを中心としたコンシューマー製品の売り上げ比率は、同社の総売上高の3分の1程度。実態としては既にBtoBが主力事業になっているにもかかわらず、訴求が十分ではなかった。そこで、「住宅」「車載」「BtoBソリューション」といった商用向けサービスについては、パナソニックロゴの下にそれぞれのブランドカラーで副題を付けた。車載であれば、パナソニックロゴの下に「AUTOMOTIVE(オートモーティブ)」とエメラルドグリーンの副題が付く。パナソニックとして副題を付けてブランドを展開するのは初めてのこと。展示会や名刺などを通じてパートナー企業に対して認知を図ることで、徐々に事業認知の向上につながっているという。

 もう一つの「見える化」の主軸となるのが「Wonders!(ワンダー)」というキーワードだ。津賀一宏社長は2013年9月、キーワード制定について自らのブログでこう語った。「変革を牽引するキーワードとして(中略)制定しました。この言葉には社内に漂う閉塞感から社員の皆さんを解き放ち、『自ら変わろう』、『お客様が驚くような新しい発想を生み出そう』といった行動を後押ししたい、との思いを込めています」。

 キーワードの制定によって、提供するサービスを仕様や社内論理ではなく、顧客が感動するかどうか、お客様がどう感じるか、といった視点で評価することを社内に植え付けた。

 ワンダーというキーワードの下、見える化施策にも次々と取り組んだ。例えば、「Wonder賞」という賞を設定し、放送作家の小山薫堂氏など6人の審査員、一般消費者100人、社内3892人の評価からその年に「変革を示した」サービスや商品を表彰した。

パナソニックが開催した「Wonder Japan Solutions」の様子。開発中の技術をパートナー企業などに見せる同社初の試みとなった
パナソニックが開催した「Wonder Japan Solutions」の様子。開発中の技術をパートナー企業などに見せる同社初の試みとなった

 2015年2月には「Wonder Japan Solutions」と銘打ったイベントを開催。同社の開発中の新技術をプロトタイプとして展示し、パートナー企業などにプレゼンテーションを実施した。開発前の商品を並べた展示会を開くのは同社初の試みだ。2回目の今年は政府関係者なども含め、3000人以上が来場したという。

 こうした取り組みが、今回の2位というランキングに反映されている。「信用力」というBtoBの因子のうち、「信頼できる」「品質技術が優れている」という項目、また「活力」という因子のうち、「チャレンジ精神がある」「エネルギッシュである」などの項目の上昇率が大きかった。

 「BtoBビジネスを加速させるには、『競争』ではなく、『共創』をする必要がある」と加藤部長は強調する。

日経ビジネス2016年4月18日号より転載