提言②保育料を引き上げよ

 国は、夫婦の世帯年収が1130万円を超える世帯からは月額10万円程度の保育料を徴収するという基準を定めている。ところが、東京都など一部自治体は独自の補助金で、親が支払う上限を月額4万~5万円程度に抑えている。安いサービスに需要が殺到するのは当然。「不要な補助金をやめて保育料を引き上げれば、高所得世帯の選択肢に認可保育園以外が入ってくるので待機児童問題は緩和する」(鈴木教授)。

 待機児童が発生しているのに、認可保育園の設置や運営に関して国の定めた基準を上回る厳しい規制を課す自治体もある。運良く認可に入れた児童は質の高い保育を受けられるが、そこから漏れた児童に対して自治体としての責務を十分果たしているとは言えない。「こうした自治体への補助金を国はカットすべきだ」と鈴木教授は指摘する。

 一方、保育園内で発生する事故に詳しい寺町東子弁護士は「0歳児や1歳児向けの国の基準は不十分で、安全面で厳しい規制を課すことは望ましい」と指摘する。保育園の評価制度など、保育の質を保つ仕組み作りを同時に進める必要がある。

保育料の引き上げ余地は大きい
●世帯年収別平均支払保育料
出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「待機児童解消に向けて保育所サービスの市場をいかに育成するか」

提言③経済原理で質の向上を

 現在、児童の親は入園させたい認可保育園について、複数カ所の希望を出せる。だが、入園の可否や入園先は自治体の判断に委ねられ、入園後も親は自治体に保育料を支払う。

 こうした硬直した構造は、質の向上を阻む。保育料は固定で売上高は経営努力によらず変わらないのに、保育の質を高める取り組みはコストがかかるからだ。「自然体験や食育など有料でもニーズのある追加サービスの提供を認め、保育を産業化すべきだ」とみずほ銀行産業調査部の利穂えみり調査役は指摘する。

 将来的には保育料も自由化し保育園が親から直接徴収するようにすべきだ。親が保育園を選べるようにし、自治体からの補助金は親にバウチャー(利用券)として配布するのも一案。保育園はバウチャーを自治体に提出して現金化できる。健全な競争こそが、質の高い保育を実現する。

提言④自治体の壁を壊せ

 どろんこ会の安永愛香理事長は昨年11月、政府に対し、「自治体がクルマで40分程度までの郊外に、認可保育園を作れるようにすべきだ」と提案した。例えば東京都港区が千葉県木更津市に保育園を作り、そこに子供たちを連れていく「郊外型移動保育所」だ。

 現在、認可保育園は建てた地域の住民を優先的に受け入れなければならないとの規制がある。だが、都市部の中心地に比べて郊外は十分な広さの土地があり、開園に必要な資金も少ない。

 4月1日に開園した川崎市の「幸いづみ保育園」は、川崎市と横浜市が共同で活用する認可保育園。定員の3分の1、30人まで横浜市の子供を受け入れる。地域の偏りという問題の特性を考えれば、柔軟に越境保育ができる仕組みを整えることは解決策になる。

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 みずほ銀行の試算によれば認可保育園の市場規模は3兆4000億円。事業所内保育など認可外の市場規模の合計4000億円と合わせて4兆円に迫る。不要な規制を廃して制度設計を見直せば、保育産業の成長余地は大きい。

(水野 孝彦、広岡 延隆)