今は違う。女性の社会進出が進んで共働きの家庭が増える中、保育園に求められる社会的役割は大きく変化している。にもかかわらず、戦後レジームは残ったままなのだ。

 一例が、保育の大きな担い手である社会福祉法人の存在だ。社福は土地を担保に金融機関から融資を受けることなどが制度上許されていない。家族経営が多く、事業所拡大の動機も乏しい。機動的な開園という役割を果たしにくく、待機児童の解決に力を発揮できなかった。

 孤児、病気や障害など、自助努力ではどうにもならない境遇の人に対する「福祉」としての保育は確かに必要だ。だが、手厚いセーフティーネットが必要な一部の人への対策の延長線上で、多くの国民が使うサービスを作れば非効率になるのは当然だ。

 待機児童問題は、母親となった人の退職や休職期間の長期化を意味する。人手不足に悩む企業は、自衛手段を講じ始めた。カプコンは来春までに大阪市内の本社近くに保育園を開設する計画だ。将来的には小学生向けに学習塾の併設も検討する。辻本憲三会長は「オフィスから保育園まで2~3分の距離。貴重な人材が長期間安心して働ける環境を整える」と語る。イオンやゼンショーも保育園経営に乗り出した。

2000年に保育事業への株式会社の参入が認められて16年。ところが、いまだに「株式会社だから、との理由で自治体から開園を断られる」と訴える事業者がいる。自治体によっては社福の既得権益を守ろうとする姿勢が残る。

 今こそ福祉という呪縛から保育を解き放ち、抜本的に改める必要がある。複数の識者に取材した中から浮かび上がった、4つの提言を行う。

提言①待遇と働き方の改革

 保育園では児童の数や年齢に応じて配置すべき保育士の数が決まっている。しかし保育士の資格を取得した人で、保育士になるのはわずか35%とされる。厚生労働省の調査では、保育士の給与月額は全産業平均に比べて11万円低い約22万円で、低賃金が保育士離れの一因とされる。

 待機児童が多い東京都や神奈川県などを中心に展開する民間最大手の保育園運営会社JPホールディングスは、2016年3月期に保育士の基本給を前の期から8%引き上げた。同じく待機児童の数が全国でも有数の千葉県船橋市では、民間の保育士のために昨年から家賃の一部を補助(1戸当たり月額8万2000円まで)している。

 政府の取り組みも含め、待遇改善が進みつつあるように映るが、注意すべき点がある。前述の調査は、私立で働く正規・非正規の保育士を調べたものだ。公立で働く保育士は公務員で、給料が全産業平均を上回る場合もある。待遇改善のための公費投入は、待機児童が生じている地域かつ、賃金の低い私立で働く保育士に集中させるべきだ。

どろんこ会は子供をバスで郊外に連れていき、ヤギの世話を体験させている。だが基本的にそのコストは「持ち出し」となっている

 保育士という仕事自体の魅力を高める努力も必要だ。どろんこ会グループ(東京都渋谷区)は、全保育士の提案に基づいて運営方針を毎年改善している。年功序列が支配し若手の意見を聞く機会が少ない業界では珍しい取り組みだ。保育士の有効求人倍率は全国平均で2倍を超える(2015年12月時点)が、同会は今年応募してきた2500人の中から318人を採用した。