閑古鳥が鳴く優良店の謎

 閑古鳥が鳴く店内、時代遅れの外観。だが、潰れそうで潰れない──。街で辻野帽子店のような店を見かけ、不思議に思った経験は誰しもあるはず。人口が減り大手流通による寡占化が進む中、目新しい商売でもないのになぜ生き残っていられるのか。

 その背景に、成熟市場で事業を永続させるヒントがあるかもしれないと考えた取材班は、「シャッター商店街の個人店」から「離島の共同店」まで全国を取材した。

 そこから見えた「潰れそうで潰れない店」の秘密は次の2つに集約できる。

①ビジネスモデルが独特
②地域と助け合っている

 「いずれも、顧客や地域との信頼関係をベースに、顧客の絶対数が少なくても商売が回る仕組みを構築している店が多い」。商店街や個人商店事情に詳しい船井総合研究所経営改革コンサルティング事業部の丹羽英之シニアアソシエイトはこう話す。

 まず、①の「ビジネスモデルが独特」から見ていこう。丹羽氏をはじめとする専門家の意見を総合すると、客がいないのに破綻しない店のビジネスモデルは、大別して3つある。

 一つは、不動産収入などがあるケース。2つ目は、外部から見えないだけで実は客はいるというケースで、店に客はいないが病院や動物園などが近隣にあり、そこと事実上の提携関係にある青果店などが当てはまる。以上2つは、不動産にせよ地縁にせよ「先代からの遺産」によるところが多く、一般企業の経営に参考にならないので深く踏み込まない。

 今回、解剖するのは3つ目の、極めて限られた顧客に、高利益率の商品・サービスを提供している店だ。

 こう書くとありがちなパターンに思えるかもしれないが、ここに該当する 「潰れそうで潰れない店」の商売は、そんじょそこらの高付加価値ビジネスではない。“顧客の限られ方”や利益率の高さは尋常でなく、客は年間数十人、利益率9割以上といった店もざら。逆に言えば、それだけ高利益だからこそ少ない客で成立するわけだが、ではなぜそこまで利幅が取れるのか。

 理由は2つある。

 一つは、競合相手が極端に少ないことだ。冒頭に登場した辻野帽子店はその典型的事例で、東京帽子協会によると「同レベルのサービス、品ぞろえを提供できる店は、関東で3店しかない」。だとすれば、「約1万平方キロメートル、人口1300万人に1軒」(=関東1都6県の人口4260万人、面積3万2420平方キロメートルに3軒)の超希少店となる。

 おのずと一般に流通していない商品も多く、それらを求め、帽子愛好家が全国から訪れる。その数、約500人。春夏2回、訪れるとして年1000人。1日の来店者は約3人となる。  確かに数は少ない。が、この3人は、好きな帽子を手に入れるためなら金に糸目をつけず、ほぼ確実に、平均単価約3万円の帽子を来店するたびに買っていく。この「単価3万円」「年間来客数のべ1000人」といったシミュレーションは、同店の年商や取材当日の来店客数とも整合が取れる。