焼き鳥居酒屋「八剣伝」を運営するマルシェの熨斗和之・商品営業部長は「ビールの価格は据え置き、(ジョッキのサイズを変えるなど)容量を見直していく」と言い、顧客が負担に感じない方策を探る。海鮮居酒屋の「はなの舞」を運営するチムニーの神之門良一・執行役員(商品担当)は「ビールを値上げすると料理も含めて全て値上げしたと消費者に思われ、客離れを引き起こしかねない。他の酒類や料理で原価上昇分を吸収していく」と話す。

 飲食ジャーナリストの中村芳平氏は「居酒屋チェーンで勝ち残るにはマージン(粗利)ミックスにたけていることが第一の条件だ」と指摘する。原価が比較的高いビールはもともともうけが薄いうえに、納入価格がさらに上昇する。それでもビールを安価に提供し続けて、ハイボールやサワー、料理で巧みに利益を取る戦略的なメニューづくりが、一段と重要になるという。

 居酒屋の店づくりで鮮明になっているのは「総合型」の居酒屋チェーンが振るわないことだ。価格の安さとともに、焼き鳥など「売り」のメニューを打ち出した「専門店」としてのアピールが顧客を呼び込むポイントになっている。1本100円の串カツを取りそろえた串カツ田中や、お客がコンロで魚介を焼く浜焼きスタイルの磯丸水産(SFPホールディングス)の人気が高い一方で、和食から洋食までメニューが豊富で、宴会需要に応えてきた「和民」の低迷が続いたのは、象徴的だ。

 このためワタミは、焼き鳥の「三代目鳥メロ」、から揚げの「ミライザカ」へと専門性を訴求した業態へと急速に転換を進めている。いずれの店舗数も既に「和民」「わたみん家」を超えている。同社の飲食事業の既存店売上高は前年同期比2017年4~12月で5.7%増と好調。今年1月、2月もプラスで推移している。

 一方、居酒屋「塚田農場」を展開し、急成長したエー・ピーカンパニーは事業の再構築を図っている。既存店売上高が14年5月から46カ月連続で前年同月を下回っているからだ。苦境を打開する策として今年3月、より多くの客層を呼び込め、専門性も高い新業態の「焼鳥つかだ」を立ち上げ、1号店を東京・中目黒にオープンした。

二律背反の課題が壁に

 居酒屋チェーンは人気業態が登場すると他社からも似た業態がすぐに出てくるのが特徴だ。飲食業界に詳しいいちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「飲食業の中でも居酒屋は参入障壁が低い。そのため運営会社数も多く、類似業態がすぐ登場する」と指摘する。いまは焼き鳥「バブル」の様相を呈しているが、生き残れるチェーンは限られるだろう。

 チェーン店の効率性と安心感だけでは通用しなくなり、専門性や店の個性が求められる時代になった。そして安さが求められる一方で、仕入れや人件費のコストは上昇し続ける。こうした「二律背反」とも言える課題を突き付けられているのが、いまの居酒屋業界だ。経営のかじ取りは難しさを増すばかりで、チェーンの優勝劣敗が鮮明になるのは間違いない。