病院周辺に乱立する調剤薬局に逆風が吹いている。国は現状を問題視し、患者の生活に寄り添うサービスを重視する「かかりつけ薬局」を増やす方針を打ち出した。逆風を受ける調剤チェーンは収益源の多様化に動き、好機とみるドラッグストアは攻勢に出る。

東京・虎ノ門にある企業に勤める40代の斎藤信雄さん(仮名)。高血圧のため、職場の近くにある診療所に月1回通っている。診療所にかかった後、発行された処方箋は診療所のビル1階にある調剤薬局に持っていくのが習慣だった。だが、最近は職場に戻る途中にあるドラッグストア「スギ薬局」虎ノ門店に、処方箋を出すことが多くなった。
「薬ができるまで、ドラッグストアの商品を見て待っていられるし、時間がない時には処方箋を出しておけば、会社の残業の後でも帰りに取りに寄れる。会計で払った分はポイントも付く」と斎藤さんはメリットを話す。
わずか5枚の処方箋でスタート

スギ薬局虎ノ門店がオープンしたのは、2013年5月。営業時間は平日は夜9時までだ。中部が地盤の同社はドラッグストア大手の中でも、いち早く調剤を併設した店舗の展開に力を入れてきたことで知られ、最近は都内にも店を増やし始めている。
同店では当初、処方箋は1日に5枚程度しか来なかったが、徐々に増えて、今では月に900~1000枚に上る。周辺には、虎の門病院や診療所が十数施設あるが、それを上回る数の医療機関の処方箋が毎月持ち込まれる。
売上高に占める調剤の割合も伸びている。オープンから数カ月後の2013年9月~2014年2月期は全売上高4430万円のうち調剤は23%だったが、2015年3~8月期では売上高1億3700万円のうち29.7%、9~11月の3カ月間だけ見ると3割を超えた。同様の傾向は、東京・日本橋や南青山にあるスギ薬局でも見られる。
「病院の近くの薬局は混んでいて待たされるイメージが強い。むしろ職場や自宅近くにあるドラッグストアに処方箋を出そうという考えが浸透してきたのではないか。米国の大手ドラッグストアチェーン『ウォルグリーン』や『CVS』のように、調剤を基本にした店舗を経営しやすい環境になってきている」。スギ薬局の創業者であるスギホールディングスの杉浦広一会長は話す。
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