こうして、社員同士の絆を深める「緊密なコミュニケーション」を促す一方で、安心して働ける「環境・風土の醸成」にも注力する。本社と愛知県長久手市の店舗の2カ所に設置する「企業内保育園」がその好例だ。

 本社内の保育園では、オフィスから窓越しに子供が園庭で遊ぶ様子が見られる。また、授乳用の個室を設けてあり、休憩時間にオフィスを抜け出して子供に授乳することもできる。フルタイムで働く社員はもとより、店舗やコールセンターなどで働く短時間正社員も利用が可能だ。

 イケア・ジャパンは2014年に人事制度改革を実施。パートタイマーを短時間正社員へと切り替え、福利厚生をフルタイムの正社員と統一した。同じ賃金体系の下、勤務時間数に応じて給与が支払われ、社会保険や厚生年金にも加入できる。現在は管理職の短時間正社員もいる。「育児や介護を含め、様々なライフステージにいる従業員のニーズに応えて成長をサポートするとともに、雇用の安定を図っている」とエリン・オールンド人事本部長は話す。

 日本の多くの企業では、今もフルタイムの正社員とパートタイマーとの待遇に大きな格差が存在する。それは従業員のモチベーションなど、「働きがい」を阻害する要因の一つとなっている。イケア・ジャパンはこの格差をなくす「仕組み」を整え、短時間正社員を含む全社員のやる気を引き出し、現場の戦力アップにつなげている。

 ここまで見てきたように、「社員の働きがい向上」を狙ったイケア・ジャパンの様々な施策は、「仕組みづくり」「環境・風土の醸成」「緊密なコミュニケーション」の3つの要素に分けられる。実はこの3要素は、多くの企業が喫緊の課題として取り組んでいる「働き方改革」を推進するための重要なポイントでもある。

部署を横断して働き、「組織の壁」を越える

シスコシステムズ<br /><small>シャドーイングを経験した安西七実子さん(左)と指導役の三鍋享子さん(隣)。マーケティング本部でのテレビ会議</small>
シスコシステムズ
シャドーイングを経験した安西七実子さん(左)と指導役の三鍋享子さん(隣)。マーケティング本部でのテレビ会議

 大規模部門で1位となった情報システム大手、シスコシステムズ。テレワーク推進のための製品・サービスを提供する同社は、01年にいち早く在宅勤務制度を導入するなど、自ら率先して働き方改革に取り組んでいる。

 社員の働きがい向上につながっている仕組みの一つが、「シャドーイング」だ。ある部署に所属する社員が、別の部署の社員の下で仕事を経験するというもの。2~3カ月の間に数時間~20時間程度、現場への同行や会議への参加などを通して、業務を体験する。社員のキャリアアップにつなげると同時に、部署を横断した交流を促す。

 製品トラブルへの対応を担当するエンジニアの安西七実子さんは昨年、マーケティング本部の三鍋享子さんの下で働いた。「仕事柄、細かい技術については詳しいが、会社全体のことはよく分からなかった。普段は全く関わりのないマーケティング部門に行くことで、両部署の橋渡し役になれるかもしれないという思いもあった」と安西さんは打ち明ける。

 希望を聞いた上司がマーケティング本部の鎌田道子本部長に掛け合い、シスコが京都府木津川市と共同で進めるスマートシティーのプロジェクトに携わることになった。「マーケティング部門は華やかな印象だったが、実際には細かい部分まで詰めながら資料を作るなど、地道な作業が多いと分かった」。体験を終えた安西さんはこう話す。

 指導役の三鍋さんも、「マネージャーの経験を積みたいと、指導役に手を挙げた。エンジニアならではの意見は新鮮だった」と笑顔を見せる。今回のシャドーイングを契機に、両部署の交流も活発になった。

(日経ビジネス2018年2月12日号より一部転載)

「働きがいのある会社」ランキング上位企業が登壇
5月30日開催「働きがいのある会社」のつくり方

日経ビジネスでは、2018年2月12日号で、2018年版「働きがいのある会社」ランキングを発表しました。上位にランクインした企業は経営トップのリーダーシップやユニークな取り組み、制度などで従業員が働きがいを感じる企業風土を創り上げています。

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