試算2▶▶▶ 第2次産業

「人+ロボット」の協働で
生産性の倍増も

 第1次産業に比べ複雑な作業が要求される第2次産業ではどうか。まず製造業。日本企業の工場はFA(ファクトリーオートメーション)化が進んでおり、今以上の自動化を実現するには、人間同様の思考と動きをするアンドロイドの登場を待つしかなさそうに思える。

 「さすがに残り24年でそこまで進化するかは未知数。むしろ第2次産業の自動化は、人をロボットに置き換えるというより、同僚のように作業する“協働ロボット”の導入が基本になると思う」

 2007年設立のロボットベンチャー、ライフロボティクス(東京都江東区)の尹祐根CEO(最高経営責任者)はこう話す。生産ラインに2人の作業者がいて、1人が検品、1人が梱包をしている場合、梱包をロボットに任せれば単純に生産性は倍になる。

 課題は2つ。一つは安全性だ。人がロボットと接触しけがをする事態を防がねばならない。その点、同社は、作業者から60cmの場所に置いても安全というピッキングロボット「コ・ロボットCORO」を開発済み。ロボットアームの“肘”の構造を工夫し稼働範囲を狭めつつ、「独自のプログラムで、人の直感を裏切らない、意外性のない動作を実現したことで、協働する人の危険予測を容易にした」(尹CEO)。

 組み立てなど、より複雑な工程をロボットに任せるための技術開発も進んでいる。先行するロボットベンチャーの一つが、2002年設立のスキューズ(京都市)。同社は今、ロボット向けの“指”を開発している。

 「ロボットが人と同じテンポで組み立てや梱包をするには、どんな工具でも持てる“指”が不可欠。製造ラインを流れてくる部品や製品が変わるたびに段取り換えをしていたら話にならない」と清水三希夫社長は話す。

 例えば弁当の製造工場では今は、総菜やご飯を容器に詰める工程で人手が欠かせない。このため現在は、多くの外国人労働者によって支えられているのが実情だ。ロボットの“指”が進化すれば、硬さも大きさも異なる食材を、形を崩さぬまま箱詰めすることが可能になる、と清水社長は考えている。

 2040年の労働力不足は約97万人と、農業以上の人材難が見込まれている製造業。が、工場労働者の一人ひとりが“協働ロボ”という部下を持てば影響は最小限になる、というのが、製造業向けロボットベンチャー起業家の共通の意見だ。

建設業では点検を丸投げ

 製造業の約97万人不足をカバーできれば、第2次産業の人口減対策はめどが立つ。製造以外に人手不足が懸念されるのは建設業界だが、不足数は47万人。製造業のおよそ半分だ。

 トンネルの壁に張り付き小さなひびを探し出し、人が入れない狭いスペースに進入し異常を点検する──。そんな点検ロボットの開発を提案しているのが、メンテナンス、監視、検査用ロボットのパイオニア、イクシスリサーチ(川崎市)だ。山崎文敬社長は「建設業において最も危険な業務の一つが点検。それをロボットが担えば人材難は相当、解消する」と話す。

 建築作業自体をロボットに任せるなら、安全性を巡り反対の声も上がるかもしれない。が、危険な作業をロボットに丸投げすることに文句は出まい。

2040年に向け驚きのロボットが続々誕生する
●人口減に挑むロボットと企業家たち
(写真=中:村田 和聡、右:菅野 勝男)
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(写真=左・右:北山 宏一)
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