ドイツ西部の街ケルン。2015年12月31日夜、新年を祝おうと中央駅や大聖堂に集まっていた市民に暴徒が襲いかかった。
多くの女性が性的暴行を受け、一部報道によると被害届は500件超。容疑者の大半は中東やアフリカからの難民だった。昨年だけで100万人以上の難民を迎え入れたドイツだが、暴動以降、世論は一変。アンゲラ・メルケル首相率いる連立政権の支持率は過去最低水準に下落した。
1960年代から先進諸国の人口減対策の切り札と位置付けられてきた移民政策。労働力不足の解消や国内市場の拡大などその有効性は多くの専門家が指摘している。が、ドイツに限らずいち早く移民政策を導入してきた欧州の現状を見る限り、その導入には、十分な国民的議論と社会的な合意形成が不可欠なのは明らかだ。
2016年1月28日、安倍晋三首相が参院本会議で「全く考えていない」と発言したように、今のところ、日本は移民政策に明確な方向性を打ち出していない。ただ、人口減少が加速する中、移民対策をどうしていくのか、具体的議論を始めねばならない時期は、着実に近づいている。
治安悪化や社会的コスト増大のリスクを承知で移民を受け入れ、経済水準を維持していくか。それとも、移民政策を見送り、“沈み行く国”になるか。いずれを選んでも道は険しい。そんな中、この難題に第3の解決策を提示する人々がいる。全国のロボット専門家たちだ。
「ロボット技術は想像を超える速度で進化を遂げ始めており、関連ベンチャーが一気に育ちつつある。このままテクノロジーが発達すれば、およそ四半世紀後の2040年には、第1次から第3次まで多くの産業の人手不足を、ロボットで補える可能性が高い」。ロボット業界に詳しいトーマツベンチャーサポートの瀬川友史氏はこう話す。
2016年現在、製造ラインなどを除けば「社会で活躍している」と言えるのは、掃除機ロボットや調理ロボット程度。残り24年間で、移民の代わりを担うまで進化できるものなのか。
本誌は全国の自動化専門家を取材し、人口減対策に「移民よりロボット」を選んだ際の、2040年の日本をシミュレーションした。試算に当たっては、人口減に伴う「国内市場の縮小」は輸出でカバーすると仮定。国際社会における道義的責任としての移民受け入れ議論はいったん脇に置くこととする。
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