基盤なくして早帰りなし

 業務基準書の作成の次に良品計画が取り組んだのが、社員の定時退社だ。「基準書の作成という、早く帰るための“基盤作り”をしておいたことが奏功した」と石崎氏は話す。

 まず、2006年9月に毎週金曜日を「ノー残業デー」として午後7時の退社とした。その目標は早々にクリアし、同年12月には毎週木曜日にも拡大。翌2007年1月からは毎日がノー残業デーになった。

 その後、2008年9月には毎日午後6時30分の退社、2014年3月からは毎日6時退社にするなど、ノー残業デーは“進化”を続けている。これが可能になったのは、部署ごとに皆で取り組みやすい目標を設定したことが大きい。「午後3~5時はがんばるタイム(業務に集中)」「電話は5分以内に終わらせる」などだ。立てた目標を達成できたかは終礼などで定期的に確認し合う。

 このほか、業務の効率化も狙い、部署内外問わずやり取りはその都度締め切りを設けて全員で共有。「いつまでに」「何を」やってもらうのかを一覧表にして、済んだものには印を付けて進捗をチェックする。

 また、定時退社だけをゴールにするのではなく、業務全体の効率化を定着させるために「WH運動」も導入した。

 WHとは、「生産性を2倍(ダブル)に、ムダは半分(ハーフ)に」という意味で、社員に主体的に改善活動を進めさせる狙いがある。

 例えば、 WH運動は半年ごとに部署の目標を立て、その達成度や最終報告を、全管理職が一堂に集って確認し合うのも特徴だ。さらに、優秀な取り組みは会社が表彰する。

 「2年前から始めた全社清掃も、働き方改革につながっている」と石崎氏。毎朝5分間、全従業員で身の回りを清掃し、月1回は大掃除する。身の回りにムダがないようにすることが、業務上の気づきにつながるという。

 「働き方改革に奇策はない。始めた取り組みを放っておいたら、いつの間にか前の状態に戻ってしまう。愚直に取り組んで、その進捗を追い続けることが大事だ」と石崎氏は指摘する。

良品計画
働き方改革に近道なし 部署の達成度を全社で確認

10年前から地道に進めてきた
●良品計画が進めてきた働き方改革の流れ
生産性を上げ、ムダを減らせているか。定期的に管理職同士で確認

達人から「技」を学ぶ

 ランキングで大企業部門の第11位に入ったジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ(東京都千代田区)は、育児中の社員への支援を充実させるなど、女性が働きやすい企業として知られる。

 ただし、最近は手厚い制度で一部を“保護”するのではなく、社員全員が効率的で生産性の高い働き方を進めるための施策に注力している。

 同社は2016年から、平日夜10時以降や休日、休暇中の業務用メールを禁止にした。就業時間外にメールへの返信に追われることを防ぐためだ。

 社員全員が休暇をしっかりと取るような風土も目指している。「ハッピーフライデー」と称して、部署内で順番に月1回、午後3時に退社する制度を2016年に取り入れた。「仕事の分担をチーム全員で考えるようになり、効率的な働き方が根付くきっかけになる」と坂口繁子人事統括責任者は話す。

 だが、仕事のスキルやスピードを上げなければ、結局は残業となり、制度は根付かない。そこで、昨年11月には効率的に働くためのノウハウを学べる社内セミナーを開催した。

 特徴は、講師を外部から招くのではなく、できるだけ社内の“達人”に披露してもらうようにしたこと。「同じ悩みを抱えている人たちを集めて、悩みがよく分かる社内の人が語るのが最も効果的だと考えた」と坂口氏は話す。

 「10回の会議を1回に!」。こんな名前のセミナーは、会議を効率よく運営するノウハウを伝える講座で、200人の定員が瞬く間に埋まったという。ヨガや食生活、ストレスマネジメントに関する講座もある。一見、業務の生産性向上とは関係なさそうだが、仕事でベストなパフォーマンスを上げるためには、健康面のフォローも欠かせないと考えた。

ジョンソン・エンド・ジョンソン
社内全体で意識改革 時短のノウハウは皆で共有

効率的に働くためのスキルや体調管理法を社内で教え合う。好評なセミナーは即満員に
  • 同僚から生産性アップのすべを会得
  • ●ジョンソン・エンド・ジョンソンの社内セミナーの例
  • エクセル
  • ▶「エクセルマスターへの第1歩!」
  • 会議の進行
  • ▶「10回の会議を1回に!」
  • 英語
  • ▶「気づいたらあなたもイングリッシュスピーカー!」
  • ストレスマネジメント
  • ▶「ポジティブ心理学! 今日から幸せになる方法」
  • 食生活
  • ▶「パフォーマンスUPのための食習慣!」
  • ヨガ
  • ▶「心と体のバランスを整えるマインドフルネス!」

川柳で社員の意識改革促す

 社内の達人が持つ技の共有は、大企業部門で16位にランクインした大手コンサルティングのアクセンチュア(東京都港区)でも進む。

 社内イントラネットには、様々な部署で実践した働き方改革の事例を保存。プレゼン資料のひな型など、誰もがすぐに活用できるノウハウが多い。

 アクセンチュアが働き方改革を始めたのは2015年。会議時間の短縮や有給休暇消化率の向上など、短期間に様々な施策を導入したほか、オフィスのレイアウトも変えた。だが、人事担当者が最も注力したのは、全社の意識改革だったという。

 「上から押し付けるのではなく、社員の本音を引き出していくことが大事」と執行役員の武井章敏人事部長は話す。そのための仕掛けとして取り入れたのが、川柳だ。

 社員から働き方改革をテーマに川柳を募集。思わず笑ったり、身につまされたりするフレーズを通して、主体的に取り組む雰囲気を醸成したのだ。「優秀作を全社メールで発表するだけでは味気ない。社内で使うプラスチック製カップに印刷して、身近に感じられるようにした」と武井部長は笑う。

アクセンチュア
社内に様々な仕掛け 明るく進める働き方改革

社内用のプラスチック製カップに川柳を印字
働き方改革に関する川柳を従業員から募集。優秀作品を選んだ

 執務スペースの壁には、「長時間残業は、もうクールじゃない」「スターのいるチームは強い。協力し合うチームはもっと強い」などといった標語を掲示。全社で本気で取り組もうという姿勢を表している。