ランキングの大規模部門(従業員数1000人以上)で1位となったワークスアプリケーションズ。1月下旬の昼下がり、東京・赤坂にある本社内の従業員向けカフェエリアに、かき氷をほおばりながら談笑する社員たちがいた。

 「部署はどちらですか」「開発です。最近新しいプロジェクトが立ち上がって…」。知らない社員同士でも自然に会話が生まれ、仕事の相談が始まることもしばしばだ。

 一見すると従業員のための福利厚生の場にすぎないが、別の目的もある。「多様な働き方や自由を尊重する会社であることを伝える、重要な場になっている」とプロモーショングループ広報担当の金田裕美氏は話す。

 ワークスアプリは、創業者の牧野正幸CEO(最高経営責任者)の仕事に対する猛烈な姿勢で知られるが、一方で社内には自由闊達な雰囲気も漂う。

 かき氷の提供を考えたのは、社員同士の関係を深めるための企画を練る専属スタッフ。彼らは「利きコーヒー」「流しそうめん」など、従業員参加型のイベントを毎週のように企画している。

ワークスアプリケーションズ
リアルとウェブで社員をつなぎ生産性もアップ

ワークスアプリケーションズのカフェエリアに昼下がりに集った社員たち。所属はばらばらでも会話が弾む

(写真=陶山 勉)

会議時間を減らしたアプリ

 こうしたリアルな交流の場がある一方、社内システムにも交流を促す仕掛けがある。

 業務上のコミュニケーションで使う自社製のアプリ「HUE(ヒュー)」。SNS(交流サイト)アプリ「LINE」のように、ウェブ上で情報をやり取りできるツールだが、AI(人工知能)を搭載している。「自分は今こんな仕事をしている」「こんな分野に関心を持っている」などと書き込むと、その内容をAIが検知して同じような分野に関心を持ったり、実際に業務を進めたりしている社員が画面に表示されるのだ。

 HUEの狙いは社員同士の交流だけではない。一番の特徴は、業務を徹底的に効率化するための機能を搭載していることだ。

 「HUEを使い始めて、会議時間が半分以上減った。その分、時間を掛けるべき仕事に集中できる」。会計系のシステム開発の責任者である西浦智博シニアジェネラルマネージャーは実感を込めて話す。

 最近、販売やサプライチェーン系の開発も兼務して多忙な毎日だが、長時間残業に悩まされてはいない。HUEの掲示板を活用しているからだ。

 会議を開くほどではないが、西浦シニアジェネラルマネージャーに質問したり、意見を聞いたりしたい──。掲示板は、そんな時にプロジェクトのメンバーが書き込める場所だ。メンバー全員が一連のやり取りを閲覧できる。

 掲示板では、毎日何件ものやり取りが交わされる。「書き方は自由」「24時間以内に必ず返信する」というルールをメンバーに伝えて書き込んでもらう。それに対して勤務中のスキマ時間を使い、順に返信している。

 やり取りは就業時間外にも及びそうだが、「返信するのは24時間以内と伝えているので余裕を持って対応できる。緊急時なら電話がくるから問題は起きていない」と西浦シニアジェネラルマネージャーは話す。

仕事は8割の時間でやる

 HUEとともに、業務の生産性向上のために推進しているのが、「スカンクワーク」。就業時間の2割を、目の前の業務ではない作業に使うという施策だ。

 「スカンクワークを楽しんでいる」と笑顔を見せるのは、稲葉達也マネージャー。人事系のシステムを開発するエンジニアだが、別のスキルを身に付けたいと思い、本来の業務とは関係のないスマートデバイス向けのアプリ開発に取り組むことにした。

 1日1時間などと時間を決めて、アプリ開発のノウハウが書いてあるウェブサイトを見ながらオフィスで勉強し、カレンダー機能のあるゲームアプリを完成させた。

 「自分が作ったアプリを同僚に知ってもらいたい」。そんな思いで社内に広めたところ、後日思わぬ反響があった。社内でスマートデバイスに対応したサービスを開発する際、「稲葉さんなら知識があるはず」と突如、担当者として関わることになったのだ。その結果、プロジェクトは滞りなく進み、表彰を受けた。

 「業務に直接関わることにスカンクワークを使うと、新しい発想は生まれにくい。第一線のエンジニアとして戦うため、短時間でも全く違う分野に触れるのがいいと思った」と稲葉マネージャーは振り返る。

 このようにスカンクワークには、自分のキャリアやスキルを高めたり、全く新しい業務の発想につなげたりする狙いがある。

 「『生産性の向上』といっても、一般に2つの意味がある。同じ仕事を短期間で終わらせるのと、同じ時間で全く新しいものを生み出すこと。当社は後者を尊重する。そのためにはスカンクワークが欠かせない」。プロダクトソリューション事業本部ソリューションプランニンググループの松本耕喜ジェネラルマネージャーは強調する。

 HUEによって就業時間を効率的に使えるようになり、その分スカンクワークにスムーズに取り組めるという好循環も生まれている。

 だが、松本ジェネラルマネージャーは「制度を作るだけでは不十分。それを支える評価制度がなければ機能しない」と指摘する。ワークスアプリは行動指針として、日々新しいことに取り組み、努力し続けた人を評価することを掲げている。前年と同じことをしても評価されず、むしろ新しいことに挑戦して失敗した方が評価される。そんな評価基準があるからこそ、働き方改革を進めてこられたのだという。

4つの柱が成長を支える
●ワークスアプリケーションズの生産性向上のための4要素

業務のムダを洗い出し

 働き方改革は、一朝一夕にはできない。10年もの間、愚直に取り組んで成果を上げてきたのが、製造小売り「無印良品」を展開する良品計画だ。今回のランキング(大企業部門)では10位に入った。同社は2017年2月期、売上高3365億円、営業利益380億円と過去最高益を見込む。

 良品計画は1990年代にセゾングループの稼ぎ頭として成長するも、2000年代に入ってからは業績低迷に苦しんだ。立て直しに向け、店舗ごとにバラバラだった業務をすべて標準化し、「業務基準書」として作成。それが、本社オフィスの働き方改革のきっかけになった。

 本社では、人事異動で担当者が変わるたびにノウハウがうまく引き継がれず、業務のムダが生じていた。それに伴い、長時間残業も常態化していた。そこで本社も店舗と同じく、各部署で業務基準書を作ろうと考えたのだ。

 作り始めたのは2006年。同時期に、全社横断的に取り組むための事務局として、業務標準化委員会を設けた。

 ただし、基準書の作成をすべて部署に任せ切りにするのではなく、内容を委員会が確認して、その後のフォローも欠かさなかった。四半期ごとに1度、部署の管理職と委員会が内容を確認して改訂を進めることとし、今日まで続いている。

 「仕事の棚卸しという効果に加えて、仕事の流れが明確になるので、ムリ、ムダ、ムラを排除できる。新人の育成にも効果的だ」と業務標準化委員会の石崎雅巳氏は話す。