消費の減少は構造的な問題

高市 総務大臣として、毎月、家計調査から見える家計消費の動向を閣議の場で報告しています。しかし、他の経済指標が改善しているのに対して、家計調査が示す世帯の平均消費は、底堅さはありますが、なかなか上向かない弱い状況が続いています。

熊谷 短期的には節約志向といった面が見受けられますが、中長期的には国友先生がおっしゃった平均世帯人員の減少に加えて、高齢化の影響も強く表れていると思います。今、団塊世代が70代に差し掛かろうとしています。現役を退いて年金を受給する年代になると、消費はやはり減っていきます。

 さらに、東京オリンピック・パラリンピックの頃には世帯数の減少も予想されています。つまり日本経済は、個人消費がマクロとミクロともに縮小する潜在性を構造的に抱えている。この構造変化はデフレギャップや消費動向を考えるうえでも重要なファンダメンタルです。

渡辺 確かに、日本は人口減少社会を迎え、このままではマクロの消費も弱くなっていくでしょう。しかも、当面は不可逆的です。国内消費を維持拡大するためには、海外からの消費の呼び込みと国民の消費水準を一段高い次元に引き上げる必要があり、そのためにも消費行動を精緻に解析しなければなりません。

熊谷 政府の中でも経済統計を見直す動きが広がり、研究会が多く立ち上がりました。家計調査をはじめ、統計のつくり方に問題提起がなされています。こういう動きは我々も歓迎しています。

 ただ、この動きは色々な見方をされていますね。2016年末にGDPが新たな国際基準への適合により、30兆円以上増えました。これ自体は基準の変更による当然の結果ですが、実際のGDPはもっと高いのではないかという声も聞かれますし、景気を良く見せようと恣意的に数字を操作しようとしているのではないか、という見方をする人もいます。多様な意見は歓迎されるべきですが、うがった見方をされるのは残念です。

高市 それは私も残念に感じています。私は、統計は社会を正確に映す鏡であってほしいと思っています。経済統計の改革についても、総務大臣になる前から強い問題意識を持っていました。

 消費が弱まっているのであれば、それをきちんと知り、問題の背景を理解できるようにしたい。新たな指標開発も、我が国の置かれている状況を精緻に把握するためであって、政権にとって都合の良い指標をつくるなどということは絶対にあってはなりません。

国友 今大臣がおっしゃったことは戦後の統計の原点です。都合の良い数字をつくって統計の信頼性を破壊した時代を、戦後、深く反省してつくり上げたのが現在の統計制度です。

世帯の平均人数は減っている
●平均世帯人数と総世帯数の推移
世帯の平均人数は減っている<br />●平均世帯人数と総世帯数の推移
出所:総務省「労働力調査」より作成。いずれも総世帯の値
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統計によって結果が違う場合も
●消費支出の推移
統計によって結果が違う場合も<br />●消費支出の推移
出所: 内閣府「国民経済計算」、総務省「家計調査」より作成。いずれも季節調整済みの実質値
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 ただ、ここにきて人口減少という、長らく経験のない局面を迎えました。大きな構造変化が起きているわけですから、人口統計だけでなく、経済統計でもその点をしっかりと捉える必要があります。

熊谷 確かに、一つの歴史の転換点と言えます。政策立案やマーケティングでは、こうした構造変化を踏まえることが重要で、経済指標はマクロとミクロの両面から見ることが必要です。政府にはそういった指標の開発に真摯に取り組んでいただきたいと思います。

 また、いかに景況を把握するかという点では、家計消費だけでなく、インバウンド消費や交際費などの企業消費を捉えるのも有効かもしれません。

高市 企業消費はGDPでは最終消費に含まれませんが、交際費などの最終需要的な消費もありますし、生産波及効果を生むので、産業連関表には一部が含まれています。よって、景況につながるというのは実感が湧きます。

 また、景況の把握という観点で言えば、振れ幅を持つ月次の数値変動の中から基調となる動きを把握するのも有効だと思います。

 政府統計は政策立案の羅針盤ですから、不規則な動きに惑わされずに経済動向の本質的な動きを見極めることが重要です。これは総務省でもしっかりと考えていきます。

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