ただ、スメハラを気にする人たちが増えているのは紛れもない事実。ハラスメント防止の研修などを実施する一般社団法人、職場のハラスメント研究所(東京都文京区)の金子雅臣代表理事は、「スメハラという言葉を聞いたときに初めは冗談かと思ったが、相談数はここ2~3年で一気に増えた。中には会社を休職・退職する従業員も出てきている」と話す。前出の多田弁護士も「今後、スメハラ関連で従業員が会社を相手取って訴訟を起こす可能性は否定できない」と警鐘を鳴らす。

スメハラが社会問題化する中、企業も真剣に受け止め始めている。マンダムが14年から企業を対象に無料で開催している「においケアセミナー」には応募が殺到している。これまで延べ50社3000人超のビジネスパーソンが、50代から本格化する加齢臭の発生原因や効果的な予防策についての講習を受けている。
実際に研修を受けた人材大手の担当者は、「服装や髪形同様、におい対策は身だしなみとして必要。新入社員研修に導入すべきかどうかを検討している」と話す。
犬型ロボットが体臭測定
もっとも、スメハラで難しいのは自分自身のにおいにはなかなか気づかないこと。そんなにおいを気にしすぎる風潮を捉えて、個人向けのにおい測定器まで登場する。

北九州工業高等専門学校発ベンチャーのネクストテクノロジー(北九州市)が開発した犬型ロボット「はなちゃん」は、鼻先に付けたセンサーで体臭を3段階で判定。無臭に近いと「すり寄る」、少しにおうと「ほえるしぐさをする」、におうと横転して「気絶する」といった愛くるしいしぐさから人気を集めている。
滝本隆代表は「13年に開発していた第1弾はそれほど注目されなかったが、わずか数年で状況が変わるとは」と驚きを隠さない。価格は3万5000円からと高額にもかかわらず「昨年12月の発売以来、高齢者を中心に問い合わせが多く、受注は好調だ」という。

同分野には大手企業も参入。コニカミノルタが開発したスマートフォンと連動する体臭測定器「クンクンボディ」はネット上で開発資金を募るクラウドファンディングで約5000万円の資金調達に成功している。
具体的なスメハラ対策に乗り出す企業も出てきた。目立つのは小売りやサービスなどの接客業だ。社会全体がにおいに対して過敏になる中、客に不快感を与えることは業績悪化に直結しかねないからだ。
たばこ臭や運転手の加齢臭など、かつては不快なにおいの代名詞だったタクシー業界でスメハラ対策に積極的なのが国際自動車だ。数年前から接客マナー向上へ対策を打ち出している。
その一つが、13年から始めた消臭スプレーの全運転手への配布だ。たばこや飲食、香水など乗客のにおいが車内に残った際に客席などに噴きかけることを奨励している。「わずかでもにおいがある市販の消臭スプレーでは不快に思う乗客もいるため、無臭を選んだ」(国際自動車の田中慎次取締役)
●におい対策を積極化する国際自動車

- 消臭スプレー(無臭)で車内を清掃
- 健康診断で歯科検診(口臭対策)を実施
- 営業所でにおいの対面チェック
- コールセンターからタクシー車内の換気を呼びかけ
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