携帯電話などからいち早く撤退し、BtoB向け事業で手堅く稼ぐ三菱電機。日本の電機業界の中でも数少ない「勝ち組」と称されるが、社内では悩みもあった。“地味”なイメージを払拭するため、デザインを起点にした改革が進行中だ。

「インスティック」は、一見すると掃除機に見えないデザインを目指した。本体上部を持ち上げれば、コードレスのスティック型掃除機となる。ベース部分は充電だけでなく、空気清浄機としても機能する。使わないときでもリビングに置いておける、出しておいた方がむしろ都合が良い掃除機を実現した

 掃除機には見えない掃除機を作る。そんなコンセプトでデザインされたのが三菱電機のスティック型掃除機「インスティック」だ。開発を主導したのは、同社デザイン研究所の女性デザイナー5人。2013年春に「女心研究会」を結成して、既存の掃除機の課題を片っ端から洗い出していった。

 そもそも数ある掃除機の中からどれを選んだらいいのか分からなかった。パナソニック、日立製作所、東芝、そして三菱電機。国内の大手家電メーカーの製品はどれもよく似ていて、ブランド名を隠したらどのメーカーの製品か見分けるのも難しい。電機メーカーに勤める自分たちがそうなのだから、一般の人なら途方に暮れるに違いない。

 そこでよく使う掃除道具を基準に、掃除に対する消費者の姿勢を6つのグループに分類した(下の図参照)。

 これまで日本メーカーは「とにかく清潔派」向けに吸引力を強化した掃除機を普及価格帯(1万~5万円)で投入してきた。ところが英ダイソンが吸引力に優れ、デザイン性も高い掃除機を発売。国内メーカーの2倍近い値段にもかかわらず、ヒット商品となった。

 同じく高額ながら、手抜き派のニーズをとらえたのが米アイロボットの「ルンバ」だ。ロボット掃除機というジャンルを切り開き、共働き世代などから指名買いされるようになった。

手間は省きたいけど、手抜きとは思われたくない女心
●よく使う掃除用具を基準に掃除に対する消費者の姿勢を分類

 三菱電機のデザイン研究所では2013年から、事業部門が異なるデザイナーがチームを組んで新しいコンセプトの製品を考案するプロジェクト「デザインX」を始めた(詳細は「三菱電機デザイン研究所の杉浦博明所長に聞く」参照)。四津谷瞳氏(写真の左から2人目)など5人の女性デザイナーは「女心研究会」を結成。忙しい生活の中で家事をやりきれていないという、現代女性の後ろめたさを軽減できる家電の開発を目指した。掃除の手間は省きたいけれど、家事を手抜きしているとは思われたくないという複雑な女心を満たすにはどうしたらいいか。最終的に、リビングに出しておくことを前提にした掃除機「インスティック」を考案した。