“ロケット好き”の熱き思いを集結
ITの次はロケットで革命を起こす

丸紅が出資も検討

 ホリエモンが手掛けるロケット会社。そう聞いていぶかしむ人もいるだろう。だが、かつての“ロケット少年”たちは失敗を乗り越えながら、一歩ずつ前進してきた。なつのロケット団結成から8年がたった2013年2月、堀江はメンバー数人とロケットベンチャー、インターステラテクノロジズ(大樹町、IST)を立ち上げた。ロケットの基礎技術がほぼ完成したことを受け、量産に移行するためだ。

ISTは東京都文京区にも拠点を構え、工作機械を駆使してロケット部品を作っている。稲川貴大社長(上の写真の中央)は、東京と北海道半々の生活を送る(写真=的野 弘路)
ISTは東京都文京区にも拠点を構え、工作機械を駆使してロケット部品を作っている。稲川貴大社長(上の写真の中央)は、東京と北海道半々の生活を送る(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 量産工場に必要な資金の調達にもめどがついた。2016年1月下旬、総合商社の丸紅が「研究開発委託」の名目で、ISTに数千万円を提供すると発表した。「事業が軌道に乗れば、数億円規模の資本参加もあり得る」(丸紅)という。

 これに個人投資家からの資金を加え、合計約5億円が調達できる見通しだ。新工場の稼働は年内を予定する。IST入社後に社長となった稲川は、「工場の建設に近く着工し、人材も集め始めたい」と意気込む。

 資金調達の見通しが立ったとはいえ、ISTは資本金1085万円、従業員数10人、設立わずか3年の駆け出し企業にすぎない。そんな会社に丸紅が興味を示したのには理由がある。ISTのビジネスには「高い市場性が見込める」(丸紅航空宇宙・防衛システム部防衛ビジネス課長の中村仁)からだ。「同じ市場を狙う競合は海外にあるが、一人勝ちしなくてもある程度の売り上げは獲得できるだろう」(中村)という。

 衛星を打ち上げるロケットは今、急成長が見込める市場の一つとして世界中の投資家や経営者に注目されている。世界の人工衛星市場は2014年までの10年間で、2.3倍の2030億ドル(約21兆7210億円)に成長した。この傾向は今後も進むと見込まれている。

 衛星ビジネスが拡大すれば、ロケットへのニーズも高まる。そこに目を付けたのが、米テスラ・モーターズ創業者のイーロン・マスクや、米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾスといった、著名経営者たちだ。

 マスクは、再利用ロケットを開発するベンチャー、米スペースXを2002年に設立。2015年12月、いったん浮上させたロケットを垂直着陸させることに成功した。ベゾスが2000年に立ち上げた米ブルーオリジンも、2015年11月にロケットを地上に軟着陸させる実験に成功している。両社とも、これまで使い捨てだったロケットを再利用することで低価格化を目指す。ただし、ブルーオリジンは低価格宇宙旅行を目的とする。衛星運搬用のロケットでは、米ロッキード・マーチンと米ボーイングの共同出資会社である米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)がエンジンを提供している。

 莫大なベンチャー資金が流れ込む米ベンチャーとは対称的に、ようやく数千万円の資金を手にしたIST。果たして勝算はあるのか。「ある」と見る企業や投資家が多いのは、ISTがそれらの企業と異なる市場を狙うからだ。

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