栃木から一足飛びに中国へ
こうして栃木県内で不動の地位を築いた同社は、昨年からついに、県外への営業エリア拡大に乗り出した。といっても茨城や群馬、あるいは東京に出店したわけではない。進出先は中国・蘇州市。地場のカメラ店をFC(フランチャイズチェーン)化し第1号店とした。
中国の古き良き伝統的な景観がまだ残る蘇州市。駅から少し離れた大通り沿いに、華為技術や小米など大手スマホメーカーの販売店と並んでサトーカメラの中国1号店はあった。窓にはたくさんのPOPや写真、そして店内の天井には印刷された写真が国旗のようにずらりと連なってつり下がっている。写真をデコレーションするためのテーブルや椅子のほか、同社おなじみのソファも置いてある。宇都宮で見た光景が、そっくりそのまま蘇州でも再現されていた。

それにしても、なぜ栃木限定で商売をしてきた中小企業がいきなり中国進出なのか。その答えは単純明快。「他県に進出するよりここに来た方が、最もウチの特徴が際立つ」。佐藤専務の息子で、中国事業を担う佐藤勇士・佐藤商貿副社長はこう話す。
中国の一般の小売店では今も接客という概念があまりない。市場の成長は鈍化しても、物が売れていく状況が続いており、現地の店舗の販売員は業種を問わずそっけなく、「おもてなし」の姿勢などほぼ皆無に等しい。
ただ、サービスレベルは以前のままでも、経済成長により庶民の間の消費者意識は確実に高まっている。例えばカメラも、アフターサービスなどない路面店で、ろくな商品説明を受けずに買うのが一般的だったが、今は多くの人が真っ当な接客を求めている。ここに、サトーカメラの勝機がある。
現実に、蘇州店にはオープン以来、顧客が殺到。来店者数はFC化前に比べ2倍に増え、粗利額は30%上がった。昨年冬、その盛況ぶりを聞きつけたキヤノンなど中国全土の販売代理店担当者約100人が訪れた。
「正直かなり驚きました」。キヤノン中国の伊藤裕之総経理はサトーカメラの店舗の印象をこう語る。キヤノン中国は今年3月、上海にショールームをオープンしたが、座って接客ができるスペースを設けるなどサトーカメラの手法を一部参考にした仕組みを取り入れている。
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