「テロの脅威は現実のもの」

 「我が国に対するテロの脅威は現実のものとなっている」。警察庁が12月4日に公表した17年版「治安の回顧と展望」は、国内の治安情勢についてこう分析した。世界を見渡せば、中東の過激派組織「イスラム国(IS)」の思想に影響を受けた者などによるテロが相次ぐ。日本はそのISから敵国として名指しされている。国内外から選手や観客が集中する東京五輪・パラリンピックを前に、関係当局は水際対策の強化に走る。その「武器」となるのが、成田空港が導入したボディースキャナーのようなセキュリティー関連機器だ。

セキュリティー市場は堅調に拡大している
●国内のセキュリティー関連機器・システム・サービスの市場
セキュリティー市場は堅調に拡大している<br /><small>●国内のセキュリティー関連機器・システム・サービスの市場</small>
出所:富士経済

 国内市場は右肩上がりだ。調査会社の富士経済(東京都中央区)によれば、19年には家庭向け機器やサービスなども含め5570億円規模に成長する見通し。海外企業勢が「バブル」と称する盛り上がりは、日本企業にとっても大きな商機に違いない。だが、先端機器の分野では蚊帳の外に置かれている。

 例えば成田のボディースキャナーは英スミスグループ製。羽田では米L3テクノロジーズの製品が使われている。

 日本企業にもチャンスはあった。文部科学省の支援を受けて東北大学とマスプロ電工(愛知県日進市)、中央電子(東京都八王子市)がボディースキャナーを共同開発。10年には成田と羽田での実証試験で使われたことがある。だが、「既に販売を中止した」(中央電子)。このボディースキャナーは、国際的には空港の保安装置として認められていないからだ。

 違いは電波の照射方法にある。海外勢は機器の方から人体に電波を照射するが、国内勢は人体が発する電波を利用して不審物を検出する。後者の方が精度は落ちるが、体のラインがぼやけて映り、女性らのプライバシーに配慮するという触れ込みだった。だが、海外では機器が電波を発する方式が技術標準として確立しており、この方式を採用した機器が各国の空港で利用されている。

 新技術の確立にこだわるあまり、世界の潮流を見誤った結果とみることもできなくはない。だが、問題はそれだけでない。海外セキュリティー企業の営業担当者はこう指摘する。 「日本に航空保安の認証機関があれば、的外れの技術で国の予算を無駄にすることもなかった」

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