中小企業にもチャンス

ホーマッツ:その通りですね。経営者は、TPPがもたらす機会を生かす方法や、新しいルールやスタンダードに適合する術をみつけなければなりません。

 そのために、マネジメントのスキル、戦略を構築しビジョンを描くセンスが必要となります。経営者がこうしたスキルを身につけられるよう、政府が教育やトレーニングを通じて、サポートする必要があると思います。

 敗者復活の仕組みは重要ですね。優れた起業家といえども、最初から成功できるわけではありません。経験を積んで、2度、3度と挑戦する中で成功するわけです。

 トーマス・エジソンを思い出してください。彼は電球を発明するのに、数多くの失敗をしました。新聞記者が「失敗するのはどういう気分ですか。もう50回も失敗しています」と問うと、彼は「失敗などしていない。こうしてはだめだという教訓を50回学んだだけだ」と答えたといいます。

 関連して大事なことは、TPPは中小企業にもチャンスをもたらすことです。中小企業は、貿易協定は大企業だけを念頭に置いていると思いがちですが、TPPはそんなことはありません。TPPの条項は、全30章のうち1章を中小企業に割いています。

 加盟国の政府がいろいろなトレーニングや支援策を率先して提供するなど、中小企業がTPPを活用できるよう努力する必要があります。中小企業こそが大きな雇用を生み出すからです。

茂木:中小企業支援策として、ベンチャー企業の育成策も重要だと思います。米国は世界で最もベンチャー企業が育っている国でしょう。米国の考え方が12カ国に広がって、新しい事業がどんどん生まれ育つようなことになると、TPP参加国の経済がさらに活性化すると思います。

 TPPは国内改革を進める良い機会をもたらす面もあります。日本は今、強い農業を作るべく改革を進めています。同様に、それぞれの国がそれぞれの事情に応じ、TPPをてこに国内改革を進めることも意味があるのではないでしょうか。

不平を述べるより自己改革を

ホーマッツ:自由貿易の話が出ると、新たに競争にさらされるであろう人たちが必ず不平を言います。しかし、正しい対応は茂木さんが指摘した姿勢です。試練に立ち向かい、自分たちがいかに競争力を増すことができるかを考える。

茂木:競争は進歩の母ですね。

ホーマッツ:はい。外国との通商協議は時に、国内における変化の機運を高め、企業の競争力を高めます。中国では、朱鎔基首相(当時)が実践しました(編集部注:中国が世界貿易機関=WTO=に加盟したことを指す)。彼は中国国内で競争が激しくなることを理解していました。しかし、それをテコにして中国企業の競争力を高めようとしたのです。

 チャレンジすることは時につらいものです。しかし、多くの企業が立ち向かってきました。これからも立ち向かっていかなければなりません。

(構成=森 永輔)

(日経ビジネス2015年12月21日号より転載)