県主導で消費キャンペーンも

 企業独自の取り組みだけでなく、行政と企業がタッグを組んでマイナー魚の普及を促す動きも進む。香川県では今年9月、地元の魚を使った総菜の価格を50円引き下げて消費拡大を図るキャンペーンを始めた。2016年1月末までの予定で「新鮮市場きむら」「マルヨシセンター」など地元の食品スーパーを中心に、マイナー魚などを使った総菜を取り扱っている。瀬戸内海で水揚げされるイカの仲間のベイカなどが、これまでに使われた。

香川県は地元の食品スーパーと組み、地魚の消費拡大を促している
香川県は地元の食品スーパーと組み、地魚の消費拡大を促している

 量産化に向けた養殖や研究が進む代替魚と、有効活用を図るマイナー魚。どちらも消費者に浸透すれば、水産資源の減少に歯止めをかける存在になり得る。だが、そこに至るには2つのハードルを乗り越えなければならない。

 まずは地域ごとの食文化の違いをどう克服するかという、普及への課題だ。例えばウツボは、高知県や三重県など特定の地域を除いて食べる習慣が少ない。牧原養鰻と、近大の有路准教授が開発したウナギ味のナマズも、ウナギ養殖が盛んな地域の出身者からは「積極的には食べない」という声が一部では上がっている。

 すかいらーくの秋本リーダーは「新たな食文化の普及には時間がかかるだろう」と話す。外食、流通各社が手を携えて新たな食材や料理を積極的に発信し、時間をかけて代替魚やマイナー魚を食べる文化を作り上げていくことが求められる。

マイナー魚の消費拡大を図る動きが相次ぐ
●各地の主な取り組み
企業・自治体名内容
すかいらーく回転ずし「魚屋路」の一部店舗で、長崎などの地魚をすしネタで提供
大地を守る会
[画像のクリックで拡大表示]
国内各地の水産業者と提携、「もったいナイ魚」のブランドで会員に宅配
香川県地魚を使った総菜などを50円引き、消費拡大につなげるキャンペーンを展開
食一地域で流通する魚に特化し飲食店に販売。「海一流」という、特にお薦めの魚種も用意
佐世保魚市場雑魚扱いでも旬の魚を調理、提供する「魚市場もったいない食堂」を運営

 もう一つは漁獲高がまだ限られ、不安定なことだ。特にマイナー魚は天然物で、場所や地域によって水揚げされる量や種類が異なりやすい。沿岸部では地域ごとに幾つもの漁協が存在し、漁業権も細かく分かれている。これが、大手水産会社が参入に二の足を踏む理由の一つだ。日本水産やマルハニチロは深海魚から抽出した油を原料に化粧品を製造、販売するなどマイナー魚の活用の多様化を進めているが、使うのはいずれも海外で漁獲した深海魚だ。

 食一の田中社長は「取引先の漁協や漁師の数を増やすことで、量の確保という問題は解決できる」と話すが、販売先の飲食店がさらに増えた場合に、安定的に量を供給できるかどうかは不透明だ。利害関係が複雑なことも多い国内の漁業者と良好な関係を築きながら、マイナー魚を地元以外にもどう広く普及させるか。水産関係者が解決すべき課題は多い。

(日経ビジネス2015年12月14日号より転載)